動物病院 豊島区 東京都 久山獣医科病院

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動物病院 東京都 久山獣医科病院

2024年03月31日午前01時半 2年ぶりの
 何度か更新を再開しますと宣言しながら・・・。今回こそ本当に、でしょうか。
 
 今年の冬は暖かく、河津桜の開花も予想以上に早く感じました。お祭りや呑み歩きが好きなわりにお花見をしない理由は、病院前に桜並木があるおかげでしょう。染井吉野誕生の地に生まれ育った僕にとって、桜はとても身近なもので、花があってもなくても桜の枝をじっくり見るのが外出時の習慣になっています。昼間の外出はどうしても難しいため華やかな桜には縁遠くなってしまいがちですが、月夜の桜も風情があり、何より枝をじっくり見ていても通行人がいないため不審がられない特権があります。
 
 この暖かさのおかげで、桜並木の開花も早いだろうなあと思っていましたが、実はまだまだです。暖かいだけでは桜は咲かないとのこと、1度寒くならないといけないと聞きました。3月末は雨風が強い日も多く、例年なら開花した桜が散ってしまわないか心配することも多かったですが、今年は咲くのかなという初めての不安に我ながら驚いています。

 これだけ身近な桜でもまだまだ知らないことが多く、いや、身近だからこそ気付かないこともある、見落とすこともある、まるで日々の診療だなあと思いつつ、つぼみすら目立たない桜を今確認してきました。

2022年02月19日午前01時半 尿検査についてまとめました
 自然排尿で尿を採取して行うことができる尿検査は、臨床検査の中では最も動物に負担をかけずに行える検査と言えます。尿は、腎臓内で血液から生成され、尿路:尿管〜膀胱〜尿道〜(♂前立腺)〜外陰部(♂陰茎♀膣)を介して体外に排泄されます。そのため、血液の状態や腎臓、尿路、生殖器の状態を反映します。

 このような理由から、特に水和状態、腎臓や尿路ならびに一部生殖器の機能または障害、中毒などの情報が得られ、全身状態の様々な変化や疾患による異常を早期に正確に判断および考察することができます。一般的な尿検査は、病状の把握や疾患の早期発見・診断に役立ちますが、確定診断が可能な疾患は多くありません。基本的には、得られた情報からさらに血液検査や内分泌検査、X線検査、造影検査、超音波検査などを合わせて行うことなどにより、精度の高い病状の管理や診断を可能とします。また、採尿方法や検体処理の変更、特殊な尿検査や細菌培養検査などを追加で行うこともあります。

 尿検査は長い歴史を持つ尿検査であり、その有用性は高く評価されておりますが、実際にはその検査や結果の考察は正しく適切に行われていません。当院では動物に負担の少ない尿検査を重視しており、さらに診療の質や精度を高めるため活用しております。そのため、今では一般的となった動物用デジタル屈折系や尿化学分析装置を早期より使用しており、2022年からの尿沈渣分析装置の導入(後述)となりました。

<自然排尿による検体採取> 清潔な紙トレーと採尿スピッツ管をご利用ください
 動物に負担をかけないため、当院で推奨する方法です。飼い主さんご家族の協力が必要で、ちょっとした工夫や努力を要することがあります。動物の排尿の習性や癖、意思に左右されますので、根気よくお付き合いしてください。

〇注意点
 朝一番の排尿は食事や運動に影響を受けないため、検査に適しています。また、初尿(排尿し始めの尿)には、細胞や細菌、外陰部や尿道ならびに包皮に由来する残照が含まれることが多いため検査には中間尿が最適ですが、できる限りでかまいません。汚染を最小限にしていただくには、採尿前に外陰部や会陰領域を清潔にして行うと良いでしょう。採尿を気にして排尿を中止してしま
う場合は、採尿方法を変えてみてください。難しい場合は、無理をせずご相談ください。

〇採尿方法
 採尿用に紙トレーや採尿専用キット、採尿用スピッツ管をお渡ししておりますが、雄犬では大きめの紙コップ、雌犬では長い柄のついたひしゃくやおたま、持ち手の付いたお皿や鍋、プラスチックトレーなどをご
利用になる方もいらっしゃいます。使用前には必ずしっかりと洗浄し、乾燥しておいてください。

 猫では中間尿の採取はより難しく、上記の採尿法も困難な場合があります。そのような時は、清潔なトイレやビニール袋で覆ったトイレを利用する方法もあり、砂のないトイレを嫌う子は、ビーズや発泡スチロール梱包材、プラスチック製のものなどを利用すると採尿が楽だということも多いです。

<その他の検体採取法>
〇圧迫排尿
 ご家庭での採尿が難しい場合に実施いたしますが、膀胱の損傷や腎臓ならびに前立腺への尿の流入などに注意する必要があり、経験と技術が必要です。

〇カテーテル採尿
 安全かつ汚染リスクが小さい方法ですが、尿道や膀胱の損傷に注意するべきで、経験と技術が必要です。

〇膀胱穿刺
 尿検査に最適な尿の採取が可能で、正確な結果が得られます。腹腔穿刺は、予想外に疼痛反応を訴える動物は少なく、比較的安全に行える方法で、特に雌犬や猫ではカテーテル採尿よりも認容され易い。ただし、血液の尿への混入や出血、尿の漏出、感染や腫瘍の播種、膀胱破裂、猫での血管迷走神経反射など危険性も伴いますので、実施要件の判断と施術者の経験と技術が大切です。

<尿検査の解釈>
1、物理的性状検査
〇色調:透明から淡黄色→脱水症状や下記疾患で異常を呈する
 赤色:血尿、ヘモグロビン尿、ミオグロビン尿 
 濃黄色/黄褐色:ビリルビン尿、ウロビリノーゲン尿
 初期(前半)血尿:尿道遠位での出血 
 終末(後半)血尿:尿道近位や膀胱頸部

〇混濁度:透明混濁なし→感染や出血、脂肪、乳びで混濁する

〇臭気:脱水や感染、糖尿病などで変化

〇尿量:26〜44ml/kg/日(1〜2ml/kg/時)→水和状態、食事、飲水、運動などで変化   
 飲水量:犬100ml/kg/日 猫50ml/kg/日以上 を多飲とする

2、尿比重検査
〇尿比重(USG):犬1.025〜1.040 猫1.035〜1.050 
→水和状態、食事、飲水、運動などで変化する

・多飲多尿(低比重尿)を呈する疾患
腎臓病、尿崩症、電解質異常、全身性炎症疾患、腫瘍、肝機能障害、多血症
低栄養、塩分過多、薬剤投与、心因性
内分泌疾患(糖尿病、副腎皮質疾患、上皮小体疾患、甲状腺疾患、先端巨大症)

・高比重尿を呈する疾患
脱水症状、高窒素血症、循環血液量減少、血液濃縮、心不全、一部の糖尿病

3、化学的性状検査
〇pH:6.0(5.5)〜7.5→酸塩基平衡、食事、運動、薬物、感染、出血、腎機能などで変化
 アルカリ尿はストラバイト、酸性尿はシュウ酸Caの産生増加

〇蛋白(PRO):正常では微量または検出されない、アルブミン及びアルブミン以外の蛋白質を検出 
→原因により、生理的、腎前性、腎性、腎後性、その他に分類される
 正確な診断には、尿中クレアチニンとの比率である尿蛋白・クレアチニン比(UPC)や尿中アルブミンとの比率である尿アルブミン・クレアチニン比(UAC)を評価する必要がある。

 生理的:過度な運動、発作、発熱、温度変化、ストレス
 腎前性:ヘモグロビン尿、ミオグロビン尿、炎症や感染による急性期蛋白の上昇
      多発性骨髄腫、全身性高血圧、薬物、急性膵炎、甲状腺機能亢進症
      副腎皮質機能亢進症、形質細胞腫、ベンズ・ジョーンズ蛋白
 腎性:腎疾患、糖尿病、免疫介在性疾患、新生物、ウイルス感染、腎前性蛋白
     糸球体性UPC>1.0 UAC上昇 尿管性UPCのみ上昇
 腎後性:下部尿路疾患、生殖器疾患

〇UPC:<0.2(±0.2〜0.5)
 腎前性:UPCのみ上昇
 腎性:糸球体性UPC>1.0/UAC上昇  尿細管性UPC0.5〜1.0/UAC上昇なし
 腎後性:炎症UPCのみ上昇  出血ある場合UPC/UAC上昇

〇UAC:犬<0.08 猫<0.02
 糸球体障害、高血圧、腎性・腎後性出血などで上昇

〇尿中コルチゾル・クレアチニン比(UCC):犬<1.35×10-5 猫<3.6×10-5
 基準値以内で副腎皮質機能亢進症を否定、基準値以上で同疾患を疑う
 検査条件:早朝第一尿または午前中尿の中間尿、平常通りの排尿、室温可(冷蔵3日)

〇BRAF遺伝子検査:陽性で膀胱・尿道移行上皮癌、前立腺癌を疑う、陰性で否定は不可

〇潜血(BLD):正常では陰性、尿中の出血または血色素を検出することあり
 出血:腎性または腎後性 
 ヘモグロビン尿:腎前性の赤血球破壊(血管内溶血) 
 ミオグロビン尿:筋肉の損傷

〇白血球(LEU):正常では陰性
 腎性・腎後性の感染や炎症を示す(尿沈渣検査にて確定する)

〇ビリルビン(BIL):正常では陰性、犬では微量に検出されることがある(+1)
 肝疾患、胆嚢胆管疾患、胆汁うっ滞、血管内及び血管外溶血で検出

〇尿糖(Glu):正常では陰性、偽陽性・偽陰性に注意
 高血糖:糖尿病、薬剤(副腎皮質ホルモン、糖製剤)、興奮(猫)、急性膵炎、一部腫瘍 
 尿細管損傷:腎毒性薬剤、感染、腫瘍、低酸素血症、循環血液量減少、遺伝

〇ケトン体(KET):正常では陰性、糖尿病性ケトーシスの診断に有用
 食欲不振、飢餓、過剰な運動、低血糖で検出

〇亜硝酸(NIT):正常では陰性、細菌感染の疑い(尿沈渣検査にて確定する)

4、尿沈渣検査
〇顕微鏡検査:尿の遠心分離後、尿不溶性の有形成分を未染色・染色検体にて鏡検
 無染色法:細菌、円柱、赤血球、白血球、粘液糸、脂肪滴、寄生虫、真菌、精子等
 染色法:赤血球、白血球、上皮細胞、大食細胞、円柱、核・細胞質内封入体、粘液糸、精子、細菌・酵母・原虫、結晶・脂肪顆粒
 特殊染色:ライトギムザ染色、グラム染色

〇尿沈渣分析装置セディビューDX:上記の顕微鏡検査に代わって当院にて実施する尿沈渣検査です
 尿沈査検査の正確性と整合性ならびに再現性をより高める機器(病状により顕微鏡検査も実施)
 AIによる尿沈渣中の有形成分の検出と重要度の高い画像の選択・提示が可能になります
 病態の把握や変化を経時的に保存します
 追加検査での細菌の有無・種類の確認も可能になりました(今まで実施できなかった検査です)
 必要な尿検体量の減量(一定量は必要)ができるため、飼い主さんも動物も採尿が楽になります
 検査時間が短縮され、省力化も可能になるため、迅速な診断が可能となります(40分→10分)
 当院で稼働中のVETConnect PLUSによる他の検査機器との連携が可能となります

〇赤血球:正常で0〜5個/HPF 尿路の出血、炎症、壊死、外傷、腫瘍

〇白血球:正常で0〜5個/HPF 細菌感染性及び非感染性(結石や腫瘍)炎症

〇上皮細胞:正常で少数 扁平上皮細胞(尿道、膣)
 移行上皮細胞(尿道、膀胱、尿管、腎盂)
 増加:細胞由来の臓器の疾患、炎症、ポリープ、過形成、腫瘍

〇円柱:尿細管の障害で検出される
 硝子円柱:腎疾患、発熱、過剰な運動
 上皮円柱:梗塞、虚血、腎毒性物、急性腎炎、腎盂腎炎、急性尿細管障害
 顆粒円柱:尿細管間質の潜在的疾患
 ロウ様円柱:尿細管腔の局所的閉塞、無尿、尿うっ滞、腎炎末期、過去の尿細管障害
 赤血球円柱・白血球円柱:尿細管内の出血や炎症
 脂肪円柱:尿細管障害
 細菌円柱:腎尿細管の感染

〇結晶:pHにより左右されるが、尿路結石の形成の可能性や存在を示唆、疾患や中毒を示唆する例もあるが、健常動物でも検出されることあり
 ビリルビン結晶:犬では少量で正常、肝胆道系疾患、胆管閉塞
 猫:原発性肝疾患、糖尿病、FIP、猫白血病、溶血性疾患、肝胆道系疾患
 尿酸アンモニウム結晶:肝機能障害、高アンモニア血症、PSS、ダルメシアンやイングリッシュ・ブルドッグ
 シュウ酸カルシウム:エチレングリコール中毒でも検出
 薬剤関連結晶

〇細菌:尿道遠位や生殖器(膣、包皮など)の常在菌に注意する

〇真菌:泌尿生殖器の常在菌であるが、増加の場合は感染症を考慮する
      糖尿病、免疫抑制状態、全身性感染症などの基礎疾患を有することが多い

〇寄生虫:糞便による汚染が多いが、まれに感染  〇粘液糸、精子

尿検査の変更について
 2022年1月末より、尿沈渣分析装置セディビューDX(アイデックスラボラトリーズ梶jを導入することとなりました。尿沈査検査の正確性と整合性、再現性をより高めるための機器で、AIによる尿沈渣中の有形成分の検出と重要度の高い画像の選択・提示(70視野)が瞬時に行え、病態の把握や変化を経時的に保存することができるようになりました。
 くわえて、今までは実施不可能であった細胞成分を減量しての再検査や細菌感染が疑われる症例での細菌の有無・種類の確認検査が可能となりました(追加費用はかかりません)。この機能により、さらに尿沈渣検査の精度が高くなるだけでなく、細菌性膀胱炎や二次感染の診断がより正確になり、また細菌感染の確認のための細菌培養検査を行う必要性が少なくなります。
 ならびに、少ない尿検体量で尿沈渣検査が可能となり(一定量は必要です)、採尿による飼い主さんの苦労や動物へのストレスを軽減できることとなります(より精度の高い検査や一部の検査では、尿検体量は10ml以上必要です)。検査手技の簡便化(尿の遠心分離や検体の染色、鏡検などが不要)により検査に要する担当者の拘束時間と検査時間の短縮(約30分短縮)もでき、より迅速な検査結果の検討も容易になりました。
 これらの検査結果は、当院で稼働中のVETConnect PLUSによる血液学的検査、血液化学検査、血液凝固系検査、血液内分泌検査などの検査機器と連携しています。

従来通り、尿検査は以下の4種の検査を実施いたします。
@官能検査:尿の臭いや色調などの検査
A尿比重検査:デジタルおよび屈折系の比重計を用いての検査
B定性検査:尿試験紙およびデジタル比色計を用いての検査
C尿沈渣検査:尿の遠心分離後、尿不溶性の有形成分を未染色・染色検体にて鏡検する方法から、尿沈渣分析装置セディビューDXによる検査に変更(病状により顕微鏡検査も実施)

2022年01月01日午前04時半 あけましておめでとうございます
 2021年大晦日に更新しましたが、アップができていなかったため、本日アップ致します。

 久しぶりの更新です。今年の診療が無事終わりました。もう1年が終わってしまう、と毎年年末には思ってしまうものですが、年をとったからなのか、生活様式や社会の変化のせいか、昨年からさらに加速しているような。いつもであれば31日の午前中まで診療ですが、今年は31日より休診をいただきました。そのおかげで、いつもは忙しく大晦日の午後を過ごし、除夜の鐘を聴きながらぎりぎり仕事が終わるというものでしたが、今年は午前中に雑用をこなし、夕方までには仕事が終わり、ウェートトレーニングをしてシャワーを浴びて年越しそば、格闘技やお笑いのテレビ番組をだらだら観て、初詣、そしてまただらだらと生さだや朝まで生テレビを観るというなんとも優雅な大晦日を過ごさせていただきました。

 大塚にある天祖神社が氏神様ですので、生まれた時から守っていただいており、本来は初詣に伺うところですが、年末にお礼の参拝を済ませて、年を明けてから人出の少ない静かな時にお参りします。初詣は近所の江戸六地蔵で有名な真性寺さんととげぬき地蔵さんで有名な高岩寺さんです。元々神頼みは性には合わないのですが、先祖を大事にすることは父母から教えられて育ちましたので、年と共に氏神様も大事にしようという気持が大きくなりました。あとは、子供が生まれてお宮参りやお食い初め、七五三などでお世話になる度によりそういう想いが強くなったのかもしれません。

 年末には一陽来復のお札を拝受するため穴八幡宮さんを参拝しますが、これは父がずっと行ってきたことなので、後を継いでいる形です。僕が車の運転免許を取得した際に、穴八幡様の交通安全のお守りを父から贈られ、交通事故にも合ってないしなあ、家にも大きな災厄はないし、と思うとやめられません。まあ、拝受の際に境内の出店や飲み屋さんで呑むのが目的になってしまっているかもしれませんが、それも一昨年から途絶えてしまいました。

 以前、神社に参拝するのは氏神様だけでいいのだよと神主さんに教わったことがあります。ずっと自分を守ってくれているのは氏神様で、聞いていただけるのも氏神様だけだよと。実際にその神社では、代々のお宮参りや七五三の記録を写真でも残し、その台帳を結界の張った蔵にしまい、毎日祝詞をあげていただいているそうで。それはとてもありがたいことだと思うようになりました。

 遠くの神社に参拝するのは、そもそもは旅行という娯楽から始まっていたり、堂々と移動する口実であったり(特に江戸時代は人の動きに厳しかったですからね)、神社の宣伝力もあったともお聞きしました。地方に行った際には、神社があれば必ず参拝しますが、「お邪魔してまーす」という具合のご挨拶と思っています。

 お正月飾りも父がしっかり行っていたことですので、それも引き継いでいます。改めてご近所さんを見て周ると、実は飾りをしているお宅や会社がいつの間にかすごく少なくなっています。車につけるお飾りも減ったなあと思っていましたが、家だけでなく会社までとは思ってもいませんでした。何かちょっと、日本らしさというかお正月らしさというか、そういうものが廃れていくのは寂しい気がします。文化も変化するわけですから、致し方ないのでしょうが。

 なので、10月は病院のハロウィンの飾り、12月はクリスマス、そしてそれを片付けた途端にお正月飾りと、楽しいことではありますが意外とハードでかつ痛い出費が・・・。

 お正月は、スタッフのお休みのために3が日まで僕が当番をするのがいつもですが、スタッフ皆が頑張ってくれるということで、2日からお休みを頂き、ゆっくりとお正月を過ごす予定です。

 病院には大きな変化も起こりました。ひとつは診療の完全予約制の採用、そして獣医師と看護師のスタッフ拡充です。診療予約性は、COVID-19の感染拡大を受けて待合室での3密回避と長時間の待機を防ぐことで感染予防を行うことが目的です。と言いましても、診療内容を劣化させるわけにはいかず今まで通りの診療を行うため、また診療内容が予測できないことも多いため、しっかりと時刻を決めてのご予約は難しく、またある程度の時間の余裕を取る必要もあるため、予約が取れにくくなってしまいがちで、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

 事前にお伺いしていなかったご相談事や症状、病状などが見つかった時は、その場で対処しなければいけませんので、その後の患者様の予約時刻がずれてしまうこともあり、再度のお詫びとなりますが、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

 ご予約いただくことで、事前に準備や検討ができること、皆さんをお待たせする時間が少なくなったことは良い傾向ですが、やはり診療できる患者様の数が確保できないということにもなることが、デメリットでもあります。また、スタッフの練度として、準備ができてしまうことにより急な診療への対応力が落ちてしまうことも気を付けないといけません。予約制となる前は、どのような症例の方がおみえになるだろうかという緊張と不安を少なからず毎日感じるわけで、その中でいかに正しい診療を行えるかという問題を日々解決し、鍛えられていきますが、その部分では自身で自己を律する必要があり、よりレベルの高いプロフェッショナルとしての意識や姿勢が試されます。その点を補うためのスタッフ拡充ですが、これからより経験を積んで生かしていけたら良いと思います。

 スタッフの拡充は、診療の向上と充実のためですが、働き方改革に合わせて今までのハードワークを緩やかにする目的もあります。実は、獣医師の過労死は想像以上に多く、また動物看護師の離職率も高く、職場環境特に就業時間の改善を行うためでもあります。

 話は変わりますが、健康診断でちょっとまずい結果があり、12月半ばからトレーニングの増量と糖質制限、そして断酒(厳密には減酒かな)を決行しています。どうしても全部だめというのは難しいので、せめて週1回の飲酒に減らし、味の付いたお酒(レモンサワーですが)や日本酒はやめる、1回の酒量を減らす(多いんです)、これを実行して年末年始にこんなに呑まないことは多分40年ぶりでしょうか(年齢的に計算が合わないことは目をつぶって)。そして、睡眠の質が良くなり(すごく浅かったんですよね)体調も良くなり、体調も良くなり、良いことづくめです。まだ半月ですが、続けないといけません。 

2021年07月26日午前01時半 約1年ぶりで
 約1年ぶりの更新です。もう読んでいただける方はいないかもしれませんが、ぼちぼち再開しようと思います。スタッフが減りさらにCovid-19対策で診療体制を変更したため、独り言の更新に割く時間が減ったことが原因ですが、正直いざ書こうとすると腹立たしいことや批判、苦言ばかりになってしまいそうで。元々愚痴を言う性格ではないので、そういうのを書いていると気持ちが負になってしまいそうで。

 春からスタッフも増え、時間的な余裕も持てるようになったので、再度ボツボツ書いていこうと思います。で、久しぶりの更新が宣伝みたいで申し訳ないのですが、実は6月に僕の講義のDVDが発売されました。

 獣医師向けの「全身麻酔を安全に行うには」という依頼でしたが、全身麻酔や外科手術は医療の集大成のようなものであるため、各論だけを論じても意味がなく、知識や技術だけを身に着けても、到底究めることはできません。また、各論については今までにも優秀な先生たちが良い講義やテキストなどを教示しており、いまさら僕の出番でもないものと思いました。

 全身麻酔は安全に行うには、病院全体の診療レベルやスタッフの意識の向上が不可欠であり、そのしっかりとした土台があってこそのものです。そのため、講義の内容は動物に対しての考え方や動物福祉、人との共生という獣医療というよりも動物と接するための基礎知識から始め、診療の心構えやインフォームドコンセント、問診から始まり系統的な観察と身体診査、理学検査。そして、臨床検査、診断技術について、となってやっと全身麻酔の話になるというものになりました。当初は2時間というお話でしたが、スライド原稿は5~6時間分に及び、重要な部分だけに何とか講義を縮小し、3時間程度に収めるようにしました。

 今までの経験から、こつこつ原稿を書くと書き進める度にさらに改善しようと書き直すのが多くなってしまうし、そもそも少しずつ書くと何を書きたかったかぼやけてしまうことがあるため、大まかな流れと骨子を作り、原稿を書き始めたら一気に終わらすつもりでした。書き始めると書くのが楽しくなるので、10時間くらいは全く休憩なしで書くのも苦ではなく、スイッチが入ると集中力が高いのですが、なかなかスイッチが入らないのが常。また、準備をしっかりしてしまうと出来上がったような気になって、気が抜けてしまうこともあり、以前12月25日締め切りの原稿で22日の夜から書き始め、3日3晩完徹で締め切りに間に合わせ、それでもアドレナリンとテンションは下がらず、そのまま寝ずに子供とスキーに出かけたたこともあります。

 どんなに時間をもらってもスイッチが入らないと終わらないし、時間がなくてもスイッチが入ると間に合ってしまうということはもう分かっていますから、10月初めに依頼を受けましたが、正月にスイッチが入ることを想定し、DVD収録は2月にしていただきました。結局正月にはスイッチは入らず、3月に突然スイッチオン、1か月間週4~5日の徹夜を繰り返し、無事4月に収録ができました。

 収録用の原稿は作らず、スライドをみながらのぶっつけ本番の講義でしたが、大きなNGは出さずかなり順調に進みました。お世辞半分、収録スタッフさんとDVD作成会社の担当さんに褒めていただけました。以前、午前午後3時間ずつ、生徒さん向けの講義を行いこれもDVD収録され販売されましたが、この時も講義原稿は作らずぶっつけ本番、ぴったり3時間ずつのDVDが出来上がりました。マイクを付けたままトイレに行ってしまうというコントのような失敗はしましたが・・・。

 ここら辺は、なんかうまくいく才能があるのかもしれません(笑)。ま、ほんとは原稿を読みながらの講義が苦手なので、いつも講演や講義、スピーチは全てぶっつけ本番でしのいでいます。さすがに人生初の学会発表は原稿を作りましたが、その次の自分の結婚披露宴のスピーチから、ぶっつけ本番ですね。つじつまを合わせる能力なんだと思いますが、自分としては自慢できる部分かな。

2020年09月27日午前06時半 大人
 赦しを請うくせに他人は赦さない、受け入れられたいくせに受け入れない、自分は大事にするのに他人は大事にしない、個性を大事にするのに他人の個性は認めない、自分は褒められたいのに他人は褒めない、批判するけど批判されたくない、優しくされたいのに優しくない、理解されたいのに理解しない、自分が正しく他人は正しくない、自分に甘く他人に厳しい、責任は取らないけど人のせいにする、自由は欲しいけど義務は果たさない、するけどされたくない。待てない、我慢できない、反省しない、直さない。

 言うべき相手には、教えるべき相手には、言わないし言えない。

 エゴ、我儘、姑息、とにかく小っちぇえ。一昔前なら、お里が知れる、育ちが悪い、親の顔が見たい、一喝されていたような言動や行動。それを大の大人が平気でやってる。

 すみません、嫌な言葉の羅列で。

 ネットだけでなく日常で横行するこんな輩ですが、今ではもう世の中に氾濫していると思います。特にお休みの日にこういう光景を目の当たりにします。外出先で、買い物先で、散歩していて、旅行先で、交通手段で、観光地で、飲食店で、宿泊先で・・・。たいていは、受け入れざるを得ない人たちに対して。絶対に言い返さない、負けない相手を選んで。

 「お客様は神様です」これはお客が言う言葉ではない、接客する人たちの心意気の言葉です。お客なら何をしてもいい、お金を出せば何でも許される、そんな話がどこから出てきたのか。

 「悪気はないんですけど」「自分はこういう人だから」ほど質の悪いことはない、開き直って直す気がないから、間違っているのに繰り返すから、それを認めさせようとするから。

 不便や不合理、不条理・・・、決して良いことではありませんが、これがあったからこそ思考、検討、考察、改善、先見、危険回避・・・、こういう能力が鍛えられました。我慢することを覚えました。自分の未熟さを恥と感じました。失敗の責任を取ることを学びました。恵まれた今の世の中が、何でも簡単にすぐに手に入る社会が、失ったものは決して小さく、少なくないものです。どうしていけばよいのか、我々大人が文字通り"ちゃんとした"、姿勢を見せ、根気よく伝え続けるしかないように思います。

 「ならぬものはならぬ」会津藩の藩是ですが、今も昔もこれは変わりません。そしてこれは、うちの病院の方針の1つでもあります。やるべきことは絶対にやる、やってはいけないことは絶対にやらない。これは、時も場所も事情も感情も関係ありません。そして医療の基本でもあると思います。

 僕も含めて、とかく人は楽な方に流され、誤った自分を肯定しがちで、何かと理屈をつけては納得しようとします。そんなとき、その芯になるものは自ら律する気持ちと職能人としての矜持しかありません。これができなければ、仕事を全うしているかどうか信頼できません。どこかで手を抜いている、さぼっている、間違っている、誤りではなくても完全ではない、そんな可能性があるからです。

 そしてそのためには、「愚直」に同じことを淡々とやり続けなければいけません。自分の形やルーティンを、行動だけでなく思考でも愚直に続けることこそ、「ならぬものはならぬ」に繋がります。愚直であればこそ、少しでもそこから外れた時に気付きが生まれ、違和感が生じ、修正が効くわけです。同じことを続けられないことは、人の怠慢と愚鈍を生むと思います。だから、これも信頼できないこととなります。

 忙しいからしょうがない、急いでるから仕方ない、疲れてるから楽したい、今日はまあいいか、そんな気持ちが僕には生まれないと言えば嘘になります。そんな時どうするか、僕はいつもとてつもなく悪い結果が起こると想像します。これをやらなければ失敗すると仮定します。後悔してもしきれないと心配します。自分を奮い立たせて、心の中で「ならぬものはならぬ」と自分に言い聞かせて、やり続けます。初めからそんな気持ちが生まれない人がいるなら、その人を心底尊敬します。

 やるべきことをやらずに、あるいはやってはいけないことをやって、患者さんの苦しみや痛みが増えること、生命の危険にさらされること、治ったとしても遅くあるいは完全に治らないこと、そんなことは許されません。自分の身に、家族に、親しい友人や知人に、そんなことが起こって許せる人がいるでしょうか。自分にされて許せないことはしてはいけない、これもうちの大きな柱です。

 子供の頃、お袋に「襖や扉、引き出しなどをしっかり閉めないと、お化けが閉めにくる」と教えられました。以来、きっちり閉めるようになりましたし、今でも思いだすことがあります(笑)。靴を揃えることも厳しく教えられ、これは友達も同じように叱られていました。当時は、意味よりも叱られないためで必死でしたが、おかげで礼儀を覚えました。友人が遊びに来ると、挨拶を大きな声で、靴を揃える、家人に挨拶する、これうちの三種の神器でした。おやつなどを頂いたときは親に伝える、これも決まりだったなあ。

 茶道と華道のお師匠だった叔母には、敷居や畳の縁を踏まないよう厳しく教えられました。忍者に床下から刺されるのを防ぐという教えは、子供にはばっちりな理由ですんなり呑み込めましたが、物を大切にする、礼を尽くす、家の空気を重んじるなどの理由は後から知りました。

 とすると、やはり先人は根気良く教えてくれたんだなあと気付きます。嫌われても、厭われても、言うべきことは言う、それが相手のためなら自分はいい、昔は普通にいらしたこんな大人は、残念ながら今は少ないと思います。

 自分に余裕があったのでしょうね、そんな大人は。待つ余裕、失敗させる余裕、しっかりとフォローする余裕・・・。他人に寛容さを求めるなら、まずは自分が寛容でないと。

2020年08月16日午前06時半 遠隔診療
 遠隔診療は、今までも普通に行ってきました。もちろん、最終的には直接診る必要があることの方が多いのですが、ある程度のリスクがあることを念頭におけば何とかなるものです。例えば、メールや電話でのご相談でも、一度も診察していない方から今までの経過をお伺いするだけで、正しい診断を下すことは決して難しくありません。少なくとも、鑑別診断までは進めます。問診がどれだけ大事か、ということを表していると思いますし、論理的思考と科学的考察に勝るものはないという証でしょう。

 反して、診療が根本的に誤った状況になっていることに遭遇することも多く、主治医の力量を疑うことも少なくありません。これはまた別の話ですが。

 ただし、我々の仕事はリモートワークでは成り立ちません。どんなに知識が進んで技術が発達しても、機器が充実しても、直接見る、聞く、触れる、嗅ぐという五感に敵うものではなく、さらに気付いたり感じたりすること、これが重要です。
 
 今、リモートワークがもてはやされ、東京からの転地も多くなっていると聞きます。もちろん、それが可能であれば、その点を進化させ充実させることは大切です。ただ不安なのは、今は特殊な環境下で認められているということ、多かれ少なかれ妥協せざるを得ない部分もあり、本当に求められる水準の仕事が全うできているのか、ここをしっかり検証する必要があるでしょう。また、実際に顔を合わせない状況で正しい判断ができるのか、信頼関係を築けるのか、これからそのノウハウを蓄積していかなければいけないでしょう。

 我々の業界でいえば、薬品や医療機器などのメーカーや卸売業者にリモートワークが増えていますが、製品の供給に関していえば明らかに以前の体制より能力は落ち、診療に支障をきたしています。ただ、無用な営業が減ったことは評価するべきですし、情報伝達の方法の変化も良いものだと思います。

 話は変わりますが、僕は旅行が好きなのでそれが気分転換の大きな柱ですが、それは家=病院の僕には唯一の開放で、仕事から離れられる瞬間です。だから、例えば都内のホテルでも十分なのですが、仕事から離れると言いつつ病院から連絡は毎日普通にありますし、連絡が1日に1度もないとむしろ不安になり、自分から連絡してしまったり(スタッフは、極力連絡しないで解決しようとしてくれているのに)します。また、旅行先にも必ずPCや資料持参で、出来る仕事をしていますし(リモートワークの走りです)、場合によっては日帰りで仕事をしてまた旅行先に戻る(転地の走りです)というのは日常茶飯、キャンプ場でランタンの明かりでX線写真を診たり、カルテが風に飛ばされて走り回る、ディズニーホテルから朝晩病院に戻る、なんてこともありました。そうまでして遊びたいのか!と言われれば、はいその通りです。

 もう一つ気になるのは、リモートワークを取り入れた会社や業界がもてはやされることが多いのですが、その前に現場で動いている人、汗をかいている人に感謝や経緯を表すべきではないでしょうか。これらの方たちは、今その過酷な労働条件だけでなく、感染症リスクを追いながら働いています。僕の周りだけでも医療現場を筆頭に、清掃業、廃棄物収集業、流通関係、建設業、施工業者、製造業、運送業、医薬品や医療機器関連・・・、本当に頭が下がります。

 逃げられる人、離れることができる人、それを悪いとは言いません。ただ、それは全て現場で動く人に支えられているのだという感謝の念を持つべきですね。今は椅子に座っていても、モニター越しでも物を生み出すことができますが、手を使って、技術を尽くして生み出す仕事の大切さを今一度思うべきではないでしょうか。

 一部の仕事は、今後必要なくなる可能性があること、これは今までも論じられていましたが、今回のことでさらに加速するかもしれません。さらには、AIに取って代わられる仕事も多くなってくるでしょう。リモートワークが可能であるということは、もしかしたら他に取って代わられるという危機感もあるでしょうし、現場仕事だってAIやロボットで賄えるということや省力化や人員削減が進むことも考えられます。各業界の業態の変化や再編なども進むでしょう。

 今を乗り切ることこそ肝要ですが、来るべき将来も考えておかないといけない、そう思います。が、日々を乗り切るので精いっぱい、これが僕の本音です。

2020年07月05日午前05時半 脂肪の塊〜類表皮嚢胞と脂肪腫について〜
 皮膚や皮下に新生物(腫瘤)を認めた場合、皮膚腫瘍や乳腺腫瘍、リンパ腫、転移腫瘍、疣贅腫(イボ)、リンパ節腫大などを疑い診断しますが、俗に「脂肪の塊みたいなもの」と言われるものが脂肪腫や類表皮嚢胞です。皮膚に隣接する皮下組織の嚢胞に老廃物が貯留して腫瘤になるものが皮膚嚢腫の1つである類表皮嚢胞であり、脂肪ではなく皮脂が原因となる良性腫瘍です。対して、脂肪細胞が増殖して拡大した腫瘍を脂肪腫といい、大半は良性腫瘍ですが悪性腫瘍である脂肪肉腫もあります。

1、原因
 1)類表皮嚢胞(皮膚嚢腫)Epidermoid cyst:エピデルモイドシスト
   〇皮下織に袋状構造物(嚢胞)が生成され、本来は皮膚から剥がれ落ちる老廃物や皮脂が嚢胞内に貯留
    することで発生する。
  
   〇毛穴(毛包、毛嚢)内の詰まりから発生することが多く、その他外傷による皮膚の還納や細菌・ウイルス感
    染、毛嚢炎により生じることもある。
 
   〇体幹特に背線や大腿部に発生することが多く、頭部や尾にも認められるが、基本的には全身の皮膚に
    発症し、皮脂の多い品種や脂質代謝異常の動物、肥満や高齢の動物に比較的多いとされる。

 2)脂肪腫 Lipoma:リポーマ
   〇皮下織の脂肪細胞の異常な増殖により、皮膜を有する腫瘤を生じ、脂肪腫となる。場合により筋肉間や
    血管・神経などに浸潤や癒着を発生する。
  
   〇四肢近位や体幹、頸部に発生することが多いが、基本的には全身に発症する。肥満や脂質代謝異常の
    動物に多い傾向がある。   

2、診断
 〇問診など:品種や年齢、基礎疾患、既往症、定期検査結果、腫瘤の外見や症状の変化など

 〇腫瘤の特徴:発生部位や大きさ、形状、硬さ、色調、皮膚の性状、炎症・感染の有無
           疼痛や掻痒・舐性の有無

 〇確定診断:身体検査や理学検査にて仮診断を行う(確定診断ではない)
          大きさや病状により、超音波検査を行う(内容物や炎症、膿瘍の鑑別)
          細針吸引生検による細胞診にて、同じような特徴を持つ皮膚腫瘤と鑑別する
          組織生検や切除生検、外科手術により病理組織検査を行い、確定診断

3、治療
 1)類表皮嚢胞
   〇経過観察(大きさや形状、硬さ、痛み、痒み、違和感、色、脱毛などに注意する)
    小さい腫瘤(扁平または1〜2mm程度)、皮膚と同様の性状の場合
    細針吸引生検による細胞診にて、変性や炎症、腫瘍などの変化が認められない場合
    疼痛や掻痒、違和感、発赤がない腫瘤
  
   〇細針吸引生検時に、穿刺痕から内容物の圧出処置が可能なことが多い
    圧出処置だけでは嚢胞が残るため、再発が多い
    圧出処置時に嚢胞も摘出できることがあるが、腫瘤の性状によることが多い

   〇間欠的な再発の間隔が長く、無症状であれば定期的に圧出処置を行うことで維持する
    拡大が著しくなると切除手術が必要となるため、定期的に観察すること

   〇拡大が著しい場合、局所麻酔下での簡易切除術や半導体レーザーによる蒸散処置を行う
    深部までの切除や蒸散が難しいため、圧出処置と同様の結果となることが多い

   〇全身麻酔下での切除手術が完治の唯一の治療法である
    他の部位への発症も多いため、局所の完治であり、他部位の発症には効果がない
    症状や再発が多い場合は、動物の痛みや苦しさを考慮し、切除手術が必須である
    全身麻酔や外科手術の負担を考慮し、慎重に考える

 2)脂肪腫
   〇経過観察(大きさや形状、硬さ、痛み、痒み、違和感、色、脱毛などに注意する)
    小さい腫瘤や皮下織・筋肉・周囲組織との癒着が著しい場合
    開眼や呼吸、摂食、排泄、運動などの機能障害を起こしていない場合
    間擦疹や皮膚の脆弱化、破裂を起こしていない場合
    細針吸引生検による細胞診にて、変性や炎症、腫瘍などの変化が認められない場合
    疼痛や掻痒、違和感、発赤がない腫瘤
  
   〇全身麻酔下の外科手術による腫瘤の切除・摘出が唯一の完治が可能な治療法である
    経過観察の条件に該当する症状や病状がある場合、外科手術が適応となる
    特に癒着や浸潤が著しい場合は、周囲組織や臓器の同時切除・摘出手術を行う
    重篤な場合は、完治あるいは外科手術自体がが困難となることもあるため、見極めが大切
    そこに至るまでの動物の痛みや苦しさが強いことを重視するべきである

2020年06月07日午前04時半 点滴治療について
 点滴治療は、水分・電解質の補給や補正を行い、脱水症状や体調の改善を促します。また、救急救命や全身麻酔、発熱時には循環血液量や血圧の維持に役立ち、輸液製剤(基剤)に糖やビタミンを添加することで疾患時の治療や栄養分の一部補給を担います。

 さらに、薬剤の投与や輸液製剤への薬剤の添加による治療、化学療法などが可能となります。点滴治療は、大きく分けて2種類〜皮下点滴と静脈内点滴に分類されます。

<静脈内点滴>
〇輸液製剤を直接血管内に点滴投与できるため、輸液および薬剤の効果が最大限発揮されます。また、上記のような薬剤による治療の大半は静脈内点滴に限られるため、多様な治療が可能となります。主に重篤な病状や外科手術、全身麻酔、救急救命時に行われる治療ですが、静脈確保(静脈内への留置針留置)したうえで入院治療や集中治療が必要となります。

〇輸液製剤や添加薬剤を体調や病状、治療目的に合わせての選択と輸液速度や輸液量などの治療計画と調整が重要であり、どのような状況でも集中管理が必要となります。

〇動物では静脈確保できる血管が少ないため、血管の確保が大切です。また、一度使用した血管は再生が難しいことも多く、そのため治療に静脈内点滴を行う場合は、最大限の効果と最長ないしは適切な期間の治療を行う必要があります。

〇点滴中は、ケージ内を自由に動くことができますが、肢を極端に丸めたり曲げたり、点滴チューブを踏みつけつたりすることで点滴投与が止まってしまうことがあります。また、点滴チューブをいたずらしたり、噛み切ることもあるため、エリザベスカラーやその他の方法での保護をする場合があります。

〇欠点としては、静脈確保により感染のリスクが高まるため、施術部位は広範囲に剃毛や衛生管理の徹底が必要となります。また、確保や点滴により浮腫や軽度の血管炎を起こすことがあり、治療を行う疾患や病状によっては、重度の血管炎・血管周囲炎や皮下脂肪織炎に波及することもあります。

〇輸液製剤によっては稀に副作用を起こすことがあり、選択を誤ると治療効果は発揮されません。また、輸液速度や輸液量の過剰は、重篤な心疾患や肺水腫、血液希釈過剰の原因となるため、適切な治療計画と胸部聴診やレントゲン検査による適時調整が必須です。輸液量と速度にもよりますが、1日当たりの必要量や治療量の投与には、6〜24時間程度要します。

〇中心静脈栄養は、重篤な病気の栄養管理に適しており、投与する薬剤に制限がなく、場合により採血にも使用することができますが、経静脈から前大静脈にカテーテルを留置するため、施術が複雑であり、頸部への静脈確保となり頸部のテーピングが必要になります。また、感染のリスクが高くなるため、注意が必要です。

<皮下点滴>
〇皮膚と筋肉の間にある皮下織に迅速な点滴投与ができるという利点がある、動物特有の治療法です。静脈内点滴に比べ短時間で投与が可能であり、安全性が高いため、入院治療や集中管理、施術部位の剃毛、輸液速度の調整の必要がありません。条件が合えば、在宅治療での実施も可能であり、慢性疾患や老齢動物への治療に適しています。

〇皮下織に貯留した輸液剤が吸収されることで効果が発揮され、また吸収にも時間がかかるため、静脈内点滴に比べ効果が小さくなり、連日の投与も難しいです。また、使用できる輸液剤や混合できる薬剤に制限があります。

〇皮下織は蜂巣のような構造のため、皮下織への輸液剤貯留はいろいろな形〜背部や体側部に塊状に、四肢に浮腫状などになります。

〇皮下織に少なからず刺激になるため、点滴後の一時的な疼痛や炎症、発熱が認められることがありますが、個体差があり大半は何度も起こることはありませんし、ほとんどの場合1日で回復します。また、治療する疾患や病状により、皮下脂肪織炎や皮下膿瘍を発症することがありますが、徹底した治療管理や衛生管理で、その可能性を小さくします。

<要点>
○ 脱水症状を予防・改善します。   ○ 水分・電解質の補給・補正をします。

○ 体調の改善や解熱を促します。   〇 循環血液量や血圧の維持を行います。

○ 腎機能の保護や改善を行います。 ○ 糖や蛋白質、脂肪、ビタミンの補給をします。

○ 薬剤を混入し点滴することで、各臓器の治療を行います。
 強肝剤・利胆剤・糖類・アミノ酸製剤;肝臓  蛋白分解酵素阻害薬;膵臓
 
 腎血流改善薬・高張生理食塩液・高濃度糖類;腎臓
 
 昇圧剤・抗不整脈薬;心臓

 マンニトール・グリセリン;脳神経疾患  鎮静剤・抗痙攣薬・麻酔薬;発作                

 輸血  コロイド溶液・血漿蛋白製剤 

 中心静脈栄養治療(高カロリー輸液) など 

 輸液製剤 リンゲル/乳酸リンゲル/酢酸リンゲル/ハルトマン液/生理食塩液

 5%ブドウ糖加乳酸リンゲル/5%ブドウ糖液/ブドウ糖加酢酸リンゲル

 ブドウ糖加乳酸リンゲル(ソルデム1/ソルデム2/ソルデム3)など

 添加剤 総合ビタミン/ビタミンB群/ビタミンC/カリウム など

2020年05月26日午前00時半 こんなとこでも
 微力ながら協力いたしました記事が、5月16日の産経新聞に掲載されました。内容は、獣医師の新型コロナウイルス感染症対策への協力です。

 僕ら小動物臨床に携わる獣医師が、普段は脚光を浴びがちですが、獣医師には僕らの仕事と同じように、あるいは僕ら以上に皆さんの生活にとって欠かせない役割を担っている職種がたくさんあります。僕らは動物の生命を救うことで、その飼い主さんを救っている仕事だと自負していますが、皆さんの生命を直接守っている獣医師もたくさんいらっしゃるんです。今回のような感染症が発症した時に対処する公衆衛生や獣医衛生を主とする官庁や保健所、大学や研究機関にお勤めの獣医師、畜産業や大動物の飼育に携わる獣医師、食肉業に携わる獣医師、ワクチンや治療薬の開発や試験に活躍する獣医師、医学分野で働く獣医師・・・。実は、動物を家族に持たない方たちも密接に関わっていて、尚且つ獣医師がいないと生活が成り立たないとも言えるんです。

 例えば、お肉、牛乳や乳製品、獣医師がいないと皆さんの口に入らないんですよ。

 実は、今回の記事を書いてくれた記者さんは、高校時代からの信頼できる友人です。親友と言ってもいいけれど、向こうはどう思ってんだろ(笑)。東日本震災の時に被災した医師である友人と、獣医師としての支援とボランティア活動についてお酒を呑みながら熱く話していた時、彼はそれを横で聞いていて、獣医師についていろいろ興味を持ってくれました。その縁で、今回の取材のお話になり、まあ僕の話はこれっぽっちも誌面には掲載されませんでしたけど、僕にも依頼のあった獣医師の活動を紹介させてもらって取材をしていただいたものなんです。

 いろいろな所で獣医師も頑張っています。いろいろな場面で縁の下の力持ちになるという獣医師の職種もあることを、覚えていてくれると嬉しいです。獣医師になりたいと思っている方たち、こういう仕事もいいもんだよ。

 web版の記事です↓

 https://news.yahoo.co.jp/articles/ef18e1b5e74aa78ccd91d5db877d879ef238b39c

2020年05月19日午前03時 情報
 新型コロナウイルス感染症については、連日報道をされており、医学や獣医学の専門的な分野だけでも多くの大学や研究機関の専門家や研究者、病院の医療従事者から新しい知見や報告がなされています。また、テレビや新聞、雑誌などのマスコミやネットニュース、SNSなどを含めると、それこそ膨大な数の情報が氾濫しています。

 まず専門家からの情報や知見の開示ですが、本来は自身あるいは他者の関連する研究をさらに積み重ねて、あるいは時間をかけて検証して、複数の機関や研究者からの知見を統合して、それが正しいのか判断しなければいけません。なので、新知見=正確ではないのです。よく誤解をされる方が多いのですが、正式な発表としては講演や論文という形になるわけですが、すぐにもうそれが正しいものと判断してしまいがちで、残念ながらこの誤解は獣医師にも多いです。

 論文は、その正確性を証明するために今までのデータや情報、論文などを精査して、その積み重ねの上に作成されています。さらに、掲載される雑誌や学術書などの媒体に関わる中でもより実績や権威のある団体や専門家が、その論文を査読し審査した結果、発表するにふさわしいと判断されて初めて世に出ます。その点、信頼に値するものと判断してよいのですが、この査読や審査、評価の方法は難しく、媒体それぞれに信頼度が異なったり、まだ発展途上であったりします。有名なSTAP細胞の事件や韓国医学界での論文データの改ざんなど、これこそまさに論文と言っても信頼できないことがある、の代表的な一例です。

 さらに誤解が多いのが、学会発表や講演、論文以外の専門誌の記事や投稿です。これらはほぼ審査されずに公開され、私見や証明されていない事象も多く含んでいますから、正確性には欠ける可能性が論文より多くなります。早く柔軟に情報を開示していく利点がありますが、今後に考察・検討されるべき点も多く含まれています。

 よく論文や講演の資料から安易に情報を入手して、診療に反映させる先生がいらっしゃいますが、本来はその情報をしっかり考察したうえで取り入れるのが大原則で、それは自分で行う必要があります。また、これらの情報を元に診療をしたとしても、その情報を採用した自分に責任があるわけで、情報が間違っていたとしてもその発信者に責任はありません。

 また、現在のような未知の感染症と戦う現状では、スピードが第一に求められます。情報やデータの蓄積、および考察に時間をかけていれば良いという時ではなく、刻一刻と変わる状況に合わせて、on timeで判断していかなくてはいけません。これが今一番難しいところだと思います。ですから、今開示される情報については、未知のことが分かったという報告が大半を占め、徐々に蓄積されたデータからこうであろうという仮説が含まれるため、真偽の判断がより難しくなりますし、玉石混合になってしまうのは無理がありません。

 専門家の意見を元にしてもこれだけのハードルやフィルターがかかる訳ですから、その他の情報は推して知るべしです。普段から言われることですが、情報の取得と取捨選択が重要ということで、それにはある程度の理論武装が欠かせません。

 今になって緊急事態宣言を行う必要がなかったという意見が出てきていますが、どこまで役立ったかは別として、感染爆発や医療崩壊を防ぎ、感染者を減少させたわけですから、あくまで感染症対策として効果があったと評価されます。また、このような事態の場合結果論でものを言うのはそもそも間違っており、そのような評価をするようになると、発言や行動にバイアスがかかり、委縮して何もできないという結果を招きかねません。

 宣言しなかったとしても、自主的にしっかりと自粛したであろうとか、個々に対策を取ったはずだという、希望的観測および楽観視は、今落ち落ち着いているからこそ言える意見で、検討の机上に挙げることすら必要ないと思います。また、このような楽観視からくる想定により被害が出た時、日本ではよく「想定外だった」という言葉に置き換えられ、誤った結果を招いても責任転嫁されがちですが、このような事態はそもそも想定が甘すぎるだけと言えます。

 ヒステリックに自粛することやそれこそ自粛警察、他者を批判・攻撃するというようなことは弊害として起こっていますが、それは元々論外のことで、誤った個人主義と寛容性に欠ける今の日本人の問題だと思います。休業要請の内容や休業補償の不備、経済活動の停止、政府の説明不足、行政の不手際など、問題は山積していますが、感染症対策としての緊急事態宣言とその緊急事態宣言の影響により起こっている問題を一緒に考えてはいけません。

 結果的に生命を守るという点では優れた対処と言えますが、前記のように経済的問題や集団免疫の獲得を阻害するなど問題点も多々あります。あくまでBESTではなくBETTERな選択であることは、誰もが分かっています。そんな中で、ご自身の判断の元に積極的は情報発信と対応されている知事がいらっしゃいますが、彼らが評価されるべきは結果的に効果が出ているという点にはなく、自分の「責任」の下にこれらの「決断」を下したことだと思います。

 いろいろ苦労をされていると思いますが、個々の思想や事情に忖度した意見や後付けや後出しじゃんけんのような批判は、そもそも自ら責任を取るつもりなど毛頭ない訳ですから、これらに怯むことなく邁進してほしいと思います。結果的に過剰あるいは失敗の対応があったとしても、決断したという事実は評価されるべきです。

 科学の側面から考えれば、事象を確率で考え、選択する場合は天秤にかけて物事を判断する傾向があります。優れた科学者であればあるほど心配性(思慮深い)で、小心者(慎重)で、迷い(細心)、妄想癖が強く(シミュレーション)、ただし自分の中で結論が出れば即断即決、より大胆(決断)に行動します。もちろんその時は、より正しく、より確実な方法を選択します。仮に、その中で省略できそうなことがあっても、あるいは結果的に必要のないことがあったとしても、誰かに不利益を被らせることとなっても、正確性や確実性を損なう可能性があるならば、その過程で省略も楽観視も忖度もせず、絶対に決断に従います。

 楽観視や希望的観測で動くことは危険が大きく、仮にうまくいったとしてもそれは結果オーライでしかなく、楽観視は大胆な決断とみられがちですが、ただ単に面倒を避けただけ、手抜きをしただけ、さぼっただけということです。例にとると、災害時の避難です。結果的に避難が必要なかった場合、「避難をしなければよかった」と考えると、次の機会には楽観的になりまた大丈夫だと避難をやめてしまい、どんどん被害を受ける可能性は増していきます。「何事もなくて良かった」と考えれば、しっかりと避難を続けるのでその後も被害を受けることはずっとありません。100回のうち99回が無駄になっても、有効な1回があれば、特にそれが生命に関わることですから、良いと考えます。

 治療もそうですね。容態が悪いときに治療をすることは、動物を苦しめず、早く治し、そして後遺症を残しません。仮にそのような状況で治療をしなくてもいいのでは?と試したとき、大半はもっと重症になって、もっと長く患って、やっと治ることになります。僕らはこのような状況をたくさん、いや毎日経験しています。

 仮に結果的に治ったとしても、動物は苦しんだかもしれません、しっかり治っていないかもしれません、後遺症が残るかもしれません。たまたま無事に済んだ時に、「ほら、必要なかった」と考えるのではなく、運よくラッキーだったなあと思ってください。そのような危険を冒す必要があったのか、大事な家族にそんなリスクを負わせることに意味があるのか、考えてみてください。

 言いにくいことですが、急患の電話の大半は「もっと早く連絡を頂ければ」「だから申し上げたじゃないですか」「以前お教えした通りにされていれば」・・・というものばかり。本当の急患の患者さん、実は思ったより少ないです。

 話を戻します。東京大学の研究で、Sars-cov-2の猫同士の感染が起こりやすいという報告がありました。この点について、ご不安を抱かれた飼い主さんが多いと聞いています。中には、パニックやヒステリックになられる方もいらっしゃるようです。

 元々、細菌やウイルス、寄生虫などの感染症は、同種間どうしで感染するものです(水平伝播)。ですから、今回の発表を特別視したり、怖がる必要はありません。Zoonosisは、人から動物に感染することもあれば、動物から人に感染することもあり、中には再帰性感染症といって動物から人、そして動物に戻ることもありますが、これも一般的なことです。現時点で、猫の感染性が高いこと、犬も猫も発症する確率が少ないこと、犬や猫からの感染は全く認められていないこと、これが大切です。だから、心配し過ぎないでください。何か問題が起こるかもと前もって心配することよりも、今の犬や猫の健康、ご自身やご家族、親しい方の健康を第一に考えてください。

 ただ、今回のことが気になった方、これを機会にもう一度思い出してほしいことがあります。犬どうし、猫どうしで感染する病気はたくさんあります。人が大丈夫だろうと思うこと、動物が喜んでいるであろうと感じること、この中にも誤りや危険もいっぱいあります。それらをもう一度見直してみませんか。ドッグランやホテル、美容院、保育園などの施設の利用、猫の外飼い、感染リスクはしっかり管理されているでしょうか、動物はその環境を喜んでいるでしょうか。

 こんな時期だからこそ。

2020年05月10日午前05時 自粛
 本来、緊急事態宣言が解除されると思われたGW明けよりフィラリア症予防の患者さんの受け入れが増えると予想しておりましたが、宣言の延長となり、迷われている方も多いと思います。ご自身の感染症対策が万全であれば、緊急事態宣言解除後ではフィラリア症予防の必要な時期を過ぎてしまうため、皆様ご来院をご検討ください。

 緊急事態宣言下での診療体制の変更では、当院でもやっとこの体制に慣れてきたところですが、患者さんの数も増えてご予約数も増えている状況で、お待たせする時間があり、まだまだ至らないことが多くご不便をおかけしております。飼い主さんと病院スタッフとの接触を抑えるよう、さらに診療時間を短縮するよう努力しておりますが、どうしてもその場でお伝えしなければいけないことが多い病状の方も少なくなく、またその場での診断や治療が必要なことも多いため、動物の体調や病状を考えると省略しきれません。

 小池都知事の自粛要請から緊急事態宣言発令直後の2週間は、患者さんの数も少なく時間の余裕ができ、普段こなせない雑用を少しずつ終わらせていけるかなと、ネガティブな中で良いこともあると開き直っていましたが、その後は例年の4、5月の忙しさとはならないものの、ほぼ日常の診療に近い状況になっています。特に連休後は気が緩みやすいと指摘されています、くれぐれもご自身の身体と動物を守るため、引き続き感染症予防にお気を付けください。

 僕の日常は職住一体のため、平日の外出はほぼ夜から深夜に限られ、会議や会合、外食くらいしかありません。診療が忙しいときは、病院前にお待ちの飼い主さんとお話しするために外に出る程度で、1週間家から出ない、太陽を観ない、なんてことはざらです。連休以外の休日も、学会やセミナー、講演で外出する以外は、特別なイベントや舞台、友人と会うくらいしかあまり外出しないかも。映画や舞台を観たり、本を読んだり、ウェートトレーニングしたり、意外と自宅というかインドアで好きなことができてしまうので、自粛と言ってもほとんど生活は変わっていないような。今は、郵便局と銀行、深夜のスーパーが唯一の外出先です。

 自粛疲れは、ただ単純に出かけたい、遊びたいという欲求だけからくるものではなく、生活の変化や不安の高まりの表れだと思います。ただ、仕事をしたくてもできない方や収入が絶たれて困窮している方、仕事は出来ているけど出勤や仕事の内容で危険を感じている方、逆に有給のような状況で楽になった方、在宅ワークでむしろ楽になった方・・・、いろいろいらっしゃるようです。そんな中で、外出できないことだけが今の不安の原因である方が、自粛で疲れるなんて贅沢な悩みなんじゃないかと、不謹慎かもしれませんが、そのご苦労を知らないから言えるだけかもしれませんが、ちょっと思ってしまう瞬間もあります。ただ、堂々と仕事ができて、その仕事が必要であると評価されて、感謝されて、苦労は増えても日常に近い生活ができていることには、ありがたいことだと思います。

 GWは例年キャンプですが今年は自粛、もちろん当然のことですが残念ながらキャンプ場も休業、急患の対応でドタキャンすることあっても、10数年ぶりの出来事です。ただ、今回は重篤な患者さんもいらっしゃったため、そもそも無理であったと思います。そこで、診療当番以外は自宅および病院の大掃除と片付け、模様替えに全力を尽くす!ことにしました。両親の遺品や家具の整理、子供たちの幼少時の持ち物の整理、資料や文献の整理・・・、2晩の完徹を含む4日間、びっちり働きました。鍛えているから大丈夫!と過信しておりましたが、重い物の上げ下ろし、100回近い階段昇降、さすがに疲れましたがこの達成感!片付いた部屋や本棚を観ながら酒を呑みたい!と思うくらい(笑)。可燃物7袋、不燃物9袋、粗大ごみ10点、本・雑誌などの資源ごみ30cm×15束、蛍光灯5本、収集業者の方、本当にありがとうございました。

 この自粛に当たり、少しでも時間があれば外に呑みに行くことを気晴らしにしていたのに、我慢できること(うずうずしてますけど)、飲酒量が激減して体調がさらに良いこと、当たり前っちゃあ当たり前ですが、知ることができました。そして長年出来なかったことができたこと、これはそういう機会をもらえたんだと感じています。

 すごくありきたりですが、不平や不満を想うことよりも、不安を考え続けるよりも、何か楽しいこと、愛しい人を想った方が幸福です。そして、することがないと退屈するのではなく、こんな時にしかできないことをする方が有意義です。僕の好きな言葉に「吾ただ足ることを知る」というものがあります。下記のように口という漢字を中心に右回りの4つの漢字で表せることができます。今まさに自分に必要な言葉だと思います。

  五
矢 口 隹
  疋

2020年04月25日午前02時 最先端の癌免疫治療
 当院では、30年前よりアガリクスやメシマコフ、ハタケシメジ、AHCC゙などのキノコ抽出物やキトサン製剤、D-12、インターフェロン、紅豆杉など免疫調整作用を持つ薬剤や漢方薬、サプリメントを用いて、免疫治療を行ってきました。さらに、臍帯血や幹細胞移による免疫治療の治験にも参加しております。現在は、これらと併用して最先端の癌免疫治療であるICG修飾リポソーム治療と光免疫誘導療法、SSMワクチン接種を主に行なうことにより、さらに成果を上げています。

 この治療法は次世代の癌治療法として、癌の3大治療である外科手術・化学療法・放射線療法での治療が不十分あるいは困難な症例に対する治療法の1つです。臨床研究の段階ですが、すでに多くの腫瘍症例に効果をあげており、さらに副作用も少ないという結果が出ており、その作用機序や理論、エビデンス、治療法も確立されております。

 当院では、獣医領域でこの研究の中核を担う鳥取大学、光照射に使用する機器メーカーの飛鳥メディカル(当院で20数年来外科手術や温熱療法に使用している半導体レーザーを偶然にも使用します)、併用して行う抗癌治療の轄笆{バイオのご協力を得て、この臨床研究に参加させていただいております。

 現在、人医分野で第4の癌治療法と評価を得ている免疫療法は、獣医領域ではサプリメントや漢方薬を用いた免疫療法はすでに歴史もあり盛んですが、免疫細胞療法であるリンフォカイン活性化キラー細胞(LAK)療法や活性化自己リンパ球療法(CAT)、がんワクチン治療であるペプチドワクチン治療や樹状細胞ワクチンも普及してきております。ただし、獣医領域でのこれらの治療法は、知識や技術の格差の問題や標準治療としてのエビデンスや治療法の確立には至っておらず、不安定である部分は否めません。その中で、このICG-Lipoと光免疫誘導療法は効果と安全性に優れた治療と考えられます。

<対象症例>
〇外科手術において、完全切除・摘出が不可能な場合、あるいは外科手術が可能であっても減容積手術しか実施できない場合、完全切除・摘出が可能でも腫瘍細胞の残存・遠隔転移が考えられる場合。

〇全身麻酔が困難である場合、あるいはデメリットが大きい場合や後遺症などの危険性が高い場合。

〇外科手術後あるいは単独での化学療法や放射線療法、その他の免疫療法などでの治療が不十分である場合。

<作用機序>
〇インドシアニングリーン(ICG)は、肝胆道系検査薬として開発された非常に安全な色素剤です。このICGは、800nmの光を吸収して発熱(温熱効果)、600-800nmの光を吸収して活性酸素を誘導(光線力学効果)します。

〇腫瘍血管の血管内皮細胞は、正常組織に比べてその整列が不均一であり、そのため正常血管内皮細胞間隙からは漏出しない粒子(20-200nm)でも、腫瘍組織の血管外には漏出します。その結果、腫瘍組織内に粒子が蓄積していきます。これをEPR効果といいます。

〇細胞膜と同じ成分で作成されたリポソーム(気泡(小胞))をこの粒径にし、血管内に投与すると、リポソームは腫瘍組織内に蓄積することになります。

〇このリポソームの膜にICGを結合させ(ICG=Lipo)、さらに抗癌剤などの種々の物質を内包させると、これらは全て腫瘍組織内に集積・蓄積されることとなります。

〇ICG-Lipoが蓄積した腫瘍組織への近赤外線照射を行うと、温熱効果(温熱療法)と腫瘍組織内に生じる活性酸素が周囲の腫瘍細胞膜を破壊し、その残物を免疫細胞が取り込むことで免疫反応が促される光線力学効果が発生します。これが光免疫誘導療法です。

〇リポソーム内に内包された抗癌剤等の種々の薬物により、さらに抗がん作用を高めていますが、リポソームの腫瘍組織への集積・蓄積効果のため、抗癌剤の投与量は従来の1/10程度と少なく、副作用も従来の化学療法や放射線治療よりも極めて少ないものとなっています。

〇結核菌抽出物ワクチン(SSMワクチン):BRM療法・サイトカイン療法
 免疫を調節することによって、間接的に癌の増殖や浸潤、転移を阻みます(免疫療法)。リンパ球やマクロファージ、ナチュラルキラー細胞などが活性化し、様々なサイトカインを誘導することによって、癌にとって環境が悪化し、癌は自滅していきます。また、多量のコラーゲン増殖作用により、癌細胞の周囲に多量のコラーゲンの壁が生成され、癌を封じ込めます。同時に、癌の栄養補給路もコラーゲンが遮断し、その増殖や転移を阻止します。

<治療法>
1、ICG-Lipoの静脈内点滴(1〜2時間)
 腫瘍組織に集積・蓄積したICG-Lipoは、腫瘍内に3週間以上残留します。

2、光照射(10〜20分)
 静脈内点滴直後より、光照射を行います。ただし、肝臓癌では、静脈内点滴2日後より光照射を行います。以降、週最低3回のペースで光照射を繰り返します。

3、SSMワクチン接種
 免疫療法を併用することで、その効果を高めることができます。2回目以降の光照射の際に、結核菌抽出物ワクチン(SSMワクチン)(アンサー20:ゼリア新薬)を同時に接種し、さらに治療の相乗効果を促します。

4、治療効果の判定および継続治療
 治療後3週間経過した段階で、治療効果の判定を行います。腫瘍が縮小あるいは現状維持であればそのまま治療を継続します。腫瘍の増大を認めるならば、リポソームに内包する抗癌剤等の薬剤の変更を検討します。

 上記1〜4を1クールとし、以降これを継続して行います。腫瘍の消失が認められたならば、初回治療から6か月間は1ヶ月ごとに維持治療(ICG-Lipoのみ投与、光照射治療)を行います。

2020年04月17日午前02時 覚悟と弱音
 娘と義妹は看護師で、彼女たちの健康はどうなのか、仕事をやめてほしいと思ってしまうこともあります。北海道の長男も気になりますし、熊本の年老いた叔父や叔母、従弟も心配です。たくさんの方が亡くなっている時に不謹慎かもしれませんが、高齢の父母がすでに他界していることに少し安堵するときがあります。最期をしっかり看取れて良かったと、寿命を全うしてくれて良かったと。今回のような感染症の流行で亡くなることは、その方がもっと生きられたのではないかとどうしても思ってしまいますし、看取りもお見送りもできないことは、ご本人だけでなく残された方たちにも、大きな悔恨になると思います。亡くなっていて良かったなんて、そんな想いが出ること自体異常な経験だと思いますが。

 僕は、父も獣医師であり、動物病院に生まれましたから、幼少時より日常から生命に関わることが多く、今よりもより家と仕事が密接であった時代ですから、むしろ生命のやり取りの中に生きてきたと言っても過言ではありません。父と母は、家族よりも動物を優先していましたし、僕も同じように考えています。だから自然と僕には覚悟ができましたし、その覚悟の上で獣医師という仕事に就きました。これは、両親に、勤務医の先生方に頂いた大きな財産だと思っています。

 父たちには、狂犬病が蔓延している時に犬や猫を診療するという勇気がありました。それだけではなく、その撲滅に尽力しました。その時どのような想いでいたのか、父と話をしていないことが悔やまれます。今存命であれば一番聞きたいこと、と言うよりは参考にしたいこと、そして勇気をもらえることでした。

 僕も、このような状況が来るかもしれないといつも考えてはいました。先に考えておけば、先に怖がっておけば、いざという時に人に先んじられると思うから。自分だけは想定内と、冷静に対処できると思っているから。でも、どうなんでしょう、役に立ってるのかなあ。

 長女は看護師になり、長男と次男は獣医科大学に通っています。僕らは後継ぎよりも、自分たちらしく生きてもらうことを望みましたが、うちの病院の様子や勤務する人たちから、僕の母の介護から、家内の実家から、いろいろな影響を受けて今の道に進みました。彼らにも、同じような覚悟があると信じています。

 家内の実家も医療に携わる仕事をしており、皆医療に関わる仕事に就いてらっしゃいます。家内の覚悟も僕と同じであることを知っていますし、それは家庭から培われたものだと思います。家内には、子供に対して僕より厳しい面があり、息子たちが獣医師になりたいと決断した時、「覚悟を持って獣医師にならないならやめるように」と教えています。そういえば、義妹も長女が看護師を目指したいと言った時、喜ぶよりもむしろ厳しい言葉をかけていました。

 でも、彼女たちは人一倍タフな訳ではなく、達観しているわけでもなく、むしろ繊細な気持ちの持ち主で、毎日娘や姪を心配する母親や叔母です。僕は、表向き強さを装っているだけで、娘にはLINEで1度だけ、逃げてもいいよと書いてしまいました。でもたぶん、彼女が逃げないのを知って書いているずるい父親です。

 たかが自粛2週間で、「呑み行きたいなあ、近くの知り合いの所なら、人も少ないし、衛生管理もしっかりしているからいいんじゃないかなあ」本気とも冗談ともつかぬ思いで言いました。妻から出た言葉は、「娘が頑張っているのに、その負担の大きくなるようなことはしちゃダメ」うーん、正しくて言い返せませんでした。テレビやネットでの発言に僕が憤っても、「こういうことで、ガス抜きしてるのじゃないのかな」と諭され、仕事では僕の方が冷静なのになあと敗北感が半端なしです。

 大学教育に携わる親友は、学生の安全と今後の教育を憂いつつ、危機管理の専門家として職責を全うしています。免疫学者の親友は、国からも官庁からも協力を得られない中で、全てを投げうってワクチン開発を行っています。

 何を書きたいのか分からなくなってきました。久しぶりに、書きたいことが溢れ出てきています。負けそうなときは、辛いときは、自分だけがそうじゃないと、もっと頑張っている人たちがいるのだと、その想いを胸に、信念を持って自分を失わず、今自分ができることを、今自分がいる場所で、踏ん張ります。

 ノブレス・オブリージュ(Noblesse oblige)という言葉があります。元はフランスの貴族や富裕層を対象にした言葉ですが、僕は「権利や権力を持つ者は社会的および道義的な責任と義務を持たなければいけない」そう理解しています。僕は偉い人ほど苦労して、汗をかかなければいけないと思っていますが(自分のことを偉いとは思っておりませんけれど)、曲がりなりにも獣医師という国家資格を持ち、院長や社長という「長」が付く仕事を得て、学会などで役員を務めさせていただき、講演やセミナー、実習で指導を行い、学術誌や専門書などの執筆もさせていただいています。皆ができることではないことに携わらわせていただいているということは、苦労が大きいのは当たり前だし、率先して人よりも働くべきだと思っています。

 今頑張っている方、自粛を全うしている方たちのモチベーションは、家族を守るため、職責を全うするため、人の役に立つため、誇りやプライドのため、資格を持っているから、収入が得られるから、逃げ出したくないから、やめたくてもやめられないから、嫌々・・・いろいろあると思います。その理由には関係なく、皆さんを尊敬します。

2020年04月15日午前02時 憤りのつづき〜覚悟
 震災の時に、遠く離れた東京で買い占めや疎開、パニックが起こりました。その時の恥ずかしさは、心に残っているものと思っていました。でも今回の買い占めの再発、がっかりしました。

 覚悟というか、意識というか、そういうものはいつも持っていないといけないと思います。例えば、東京に住んでいれば便利ですし手に入るものも多い、仕事や遊びも多いし、出会いも多い。けれど、自然が少ないし、うるさいし、ごみごみしてるし、対人関係が希薄であったり、それこそ、今回のような感染症の流行には弱い。地方であれば風光明媚であったり住みやすさがあったりする反面、不便さや過疎化、慣習が多い、仕事が少ない、自然災害が多いなどあります。どちらにも良いところ困るところがあって、良いとこどりなんてできないと思います。そのリスクを負うからこそ、普段は大きなメリットを受けているはずです。

 仕事もそうです。会社に属すれば、会社という盾を得ることになり、守られ、保証され、武器にもなります。反面、得る報酬は決まっており、厳しい規定や競争、人間関係の中で生きていかなければいけません。逆に僕らのようなフリーランスの場合、自分の力で切り開くことができ、信念を貫くことができ、周囲からの評価を一身に浴び、収入や時間にある程度の自由が得られます。反面、自分が働かなければ仕事も進まず収入も断たれ、もちろん有給休暇などありませんし、問題が起これば独りで解決しなければならず、誰も守ってくれません。これも同じ、リスクはあるけどメリットを重視して選択しているはずです。

 テレワークができるかできないか、あるいは休業することで収入は断たれるけど休むことができ感染のリスクは抑えられる、休業できない中で収入は得るけど感染リスクは高まる、これだけでも大きな格差です。実際ニューヨークでは、黒人の方やヒスパニックの方の感染が多い統計が出ていて、これは職業と貧困が関与している、ホワイトカラーとブルーカラーの差が如実に出ています。世の中に公平なんてそもそもありません。

 先ほどの環境の話もそうですが、これも1つの覚悟だと思います。中には自分が上手くいっている時はどれだけ良いかは黙って独りで恩恵を受け、上手くいかなくなると周囲に文句を言い、社会や国に訴える。社会情勢や政治、戦争、災害など、自分がコントロールできないことは世の中にいくらでもあり、それは想定内のはず。覚悟をしていなかっただけという根底があるのではないでしょうか。

 もちろん、この感染症はその域を超えており、覚悟なんて消し飛んでもおかしくありません。政府や行政の対応は、遅く、稚拙で、満足のいくものではありませんし、各個に良いもの悪いものがあり、言いたいことがあるのは分かります。だけど、万人に皆に良いものなどありませんし、世界が混乱している状況での今は、致し方ない、あるいは受け入れるしかない部分もあるはずです。その中で、文句ばかり言うのではなく、批判のための批判をするのではなく、あげ足取りをするのではなく、自分が生きるためにどうすれば良いか、利用できることはないか、そして傷つかないようにあるいは傷を小さくするために、前向きに考えなければいけない時だと思います。

 偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、僕も含まれているお話で、不安ですし、怖いですし、実際に4月の病院の営業はメチャクチャ、大変です。人の精神状態を敏感に感じ取る動物たちの体調が一番心配ですし、このような状況で見過ごされてしまう病気も怖いです。そして社会情勢に左右されるペットたち、この先不安です。そして、飼い主さんたちの体調も心配ですし、頑張ってくれているスタッフのことも気掛かりです。病院だってどうなるのか、分かりません。

 僕らを心配していただいている方も多く、飼い主さん方から毎日暖かいお言葉を頂きます。、いつも書いていますが、そのお気持ちだけで僕らは頑張れます。そして、これが僕らの仕事です。だから大丈夫です。日頃から、「先生、先生」とちやほやしていただいておりますから(笑)、こんな時こそ少しくらい良いとこをお見せないと、格好悪いでしょう。

2020年04月12日午前01時 憤り
 今回は、公式なアナウンスメントではなく、好き勝手に書きます。

 医師や看護師をはじめとする医療従事者が、新型コロナウイルス感染症との戦いにおいて、皆から賞賛をされています。そして、人員の不足が取り沙汰されています。けれど、僕はその傾向にとても違和感があり、それは賞賛されていることに対してではなく、人員不足に対してではなく、何より「何を今さら」という憤りです。

 今回、医療従事者特に医師がマスコミに取り上げられることが多くなり、その中でも感染症と最前線で対峙する医師が頻繁にテレビに出演されています。その際のインタビューで印象的なものがありました。感染の防疫についての啓蒙が医師から行われた後、キャスターが医師を思いやり「お身体は大丈夫ですか?休憩や食事は十分ですか?」という質問をされました。医師は笑いながら「休む時間も食事の時間もありません。ただ、それはいつものことです。」と答えられました。

 そうなんです、多忙な医療従事者はそもそも、日常から休憩も食事も睡眠も十分取ることはできていませんし、人手不足もずっと以前から指摘されています。そんなことは常識ですし、知らないまでも皆さんも薄々気付いているでしょう。たくさんのテレビや映画、小説などで描かれていますから。

 だから「何を今さら」なんです。こんな時だからこそ、見直そうという機会になると考えれば、それはそれで必要なことだと思いますが、だったらなぜこのような事態になってからではなく、もっと早くに医療問題を考えてこなかったのかと問題提議する報道がないのでしょうか。それならなんで、クレーマーやモンスターペイシェントが増え続けているのでしょう。だったらなぜ、無自覚で無責任、利己的な意見や行動が今でも見受けられるのでしょうか。

 上辺だけの賞賛やお祭り騒ぎの英雄譚に終始することなんて、医療従事者の誰も望んでいません。そんなことよりも彼らが望むのは、各自が感染症に対しての意識を高め、その危険性を熟知して、責任ある行動を取ることです。自分が、彼らを苦しめることになるかもしれない、彼らを危険に晒すことになるかもしれない、そのたった1つのことも考え及ばないのでしょうか。

 最近の風潮として、ご活躍の方や急死された方をやたらと誉めそやしたり、より栄誉的な状況を演出したり、美談をクローズアップし過ぎたり、挙句の果てに感動的なfakenewsを流したり。スポーツ選手や芸能人の活躍や闘病、苦労、シンデレラストーリー、急死に特に多いような気がします。生きてらっしゃるときに、ご活躍されている時に、もっと評価をしておけば良いのに、伝えておけばよかったのに、そう思ってしまいます。もちろん、失って分かることも多いのは理解しますが、ひどすぎる気がします。日本人特有の判官贔屓は悪いことではないと思うけど。

 逆に、少しでも失敗や失言をしたり、自分だけの常識や正義、理想、希望と反すると、批判や誹謗中傷、デマの流布を攻撃的に行う。不倫報道や新型コロナウイルス感染症の感染者、政府や都の対応などに多いですね。そして賞賛していた相手も、自分との関わりがある、自分に不利益になるかもしれないという状況になると、一転して受け入れを拒否してしまう。医療従事者や感染リスクのある仕事に就かれている方とその家族が、差別を受けていることに表れていると思います。

 皆がそうではないと思いますが、その人の偉業に気付いている自分、人を賞賛する自分、感動的な自分、良い人である自分、自分、自分、自分・・・、結局自分を良く思い、良く持ち上げるための自慰行為だと思うんです。逆に、人を攻撃することで自分を正当化する、自力(なんてないですけど)を誇示する、自分が満足する、自分が安心する、自分のガス抜きになる・・・、やっぱり自分です。このような行為に賛同される、仲間ができる、そして自分は安全な場所にいる。

 自分に希望があるなら他人にも希望があり、自分の常識が世の中の常識とは限らず、正義は人の数だけある、こんな単純なことが忘れられてはないでしょうか。世の中は、社会は、寛容を求める、あるいは許される時代となったのに、自分には寛容で他人には厳格で。
 
 感染した方を非難するのも間違っています。もちろん、無自覚な行動により引き起こされた感染は、その行動が感染の原因であったり、感染者を増やすことになった可能性もあり、批判の対象になってもやむを得ない部分もあると思いますが、いつ感染が起きたか不明な事例も多く、実際にはその行動とは無関係のこともあり得ます。いえ、そもそもそんな科学的な根拠ではなく、感染症に否応なくなってしまった場合、どんな理由があっても非難されるべきではありません。自粛している方にとっては、責任ある行動をとられる方にとっては、腹立たしいことは理解できますが、その中には羨ましさや嫉妬もあるかもしれません。

 そんな中、生命を顧みず戦う人たちは、この未曾有の状況で、誰も経験したことのない現状で、極限状態での対応が続いており、それがご自身だけでなく、仲間にも、家族にも生命の危険がある今も、です。命がけで自分の責任を全うすること、本当に正しく理解されているのでしょうか。いやそれは体験した者でしか、覚悟している者にしか、分からないと思います。「命がけで」、簡単に口にすることはできますが、それを実証し行動することへの誇りと信念、恐怖と苦悩、そのジレンマ、その葛藤は計り知れません。

 医療従事者だけではなく、警察官や消防士、自衛官、技術者、専門職、職人・・・獣医師?。獣医師に?マークが付くのは、残念ながら皆がそうでないことを知っているからで、お恥ずかしい限りです。大半の政治家もこの中には入っていない、これは常識ですよね。日常から覚悟を持って生活している人は思っている以上に多いですし、覚悟で言えば他の職域の方にもいらっしゃいます。特に新型コロナウイルス感染症が拡大している今、より多くの方が文字通り命がけで仕事に従事されています。

 そんな難しいこと考える余裕は今はない、そう言われてしまうかもしれませんが、今までの経験を考えると余裕ができた頃には忘れているでしょう。だからこそ、自分も含めて、今感じたことを心に刻み付け、それを糧にして少しでも成長する、あるいは変化するきっかけにする、そうなれば良いと思います。

2020年04月08日午後06時 緊急事態宣言
 緊急事態宣言が発令されました。当初の予定通り、本日より当院のマニュアルに従った診療体制へ移行させていただきました。マニュアルは、あくまで混乱しないための準備をした安心感を作るためのもので、全てがマニュアル通りに進むなんてことはありません。ましてや、史上経験のない状況で、どんなに準備しても至らない部分が多々あると思います。繰り返すことで改善点が見えてくると思いますが、皆さんからも遠慮なくご意見を頂きたいと思っています。

 マニュアルに反することになりますが、軽症や予防もできる限り対応しようと思っています。今軽症でも・・・、痛いのや痒いのはちょっとでも放っておけない、と考えるとやっぱり心配です。やむを得ずお断りする場合は、ごめんなさい。お支払いも、現金を消毒するようにできましたので、キャッシュでのお支払いも可能です。お薬や食事療法食のお渡しの方法やお支払方法を「トピックス」に更新いたしました。ご参照ください。

 想定外という言葉は大っ嫌いです。この言葉を使う人は、たいていその想定が甘すぎるだけで、考察や検討、準備が足りないだけのことの、言い訳でしかありませんから。でも今回は、「想定外」使わざるを得ません。コロナウイルスはそもそもそんなに怖くないウイルス、SARSやMERSでそうでもないぞという経験をしていましたが、ここまで感染力も病原性も高いことは、なかなか予測できませんでした。

 そして今のパンデミック、さらにいろいろな思惑や利権、利益が絡むとここまで恐ろしい状況になるんだ、全てが分かっていながら想定外でした。まだ、これからも想定外は起こると思います。だけど僕らは、今分かっている事実から今を判断し、明日を予測し、できるだけ想定外をなくすように、できるだけ不幸の芽を早く摘み取れるように、風評や非難、誹謗中傷、責任転嫁や八つ当たりに流されることなく、流すことなく、利己ではなく利他を心掛け、月並みですが一緒に頑張りましょう。

 いろいろご不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

2020年04月01日午後08時 2020年度狂犬病予防接種の実施について
 新型コロナウイルスの感染予防のため、今年度の豊島区狂犬病予防定期集合注射を6月1日(月)〜7日(日)に延期されました。

 例年通り、定期集合注射をご希望される方は6月までお待ちください。今年度の動物病院での外来診療での今年度の狂犬病予防接種は、4月1日より平常通り実施しておりますので、いつでもご利用いただくことは可能です。

 定期集合注射は、行政事業に獣医師会が協力する形で行う社会貢献事業であり、

 〇カルテ作成が不要  〇診察料がかからない  〇国の定める規定料金での接種 
 〇当院では狂犬病予防定期集合注射の方を優先します 

が行えますが、外来診療での予防接種は、

 〇初診の方はカルテ作成が必要  〇初診料または再診料が必要  
 〇病院ごとの接種料金(当院では、年間を通して国の規定料金で接種しています) 
 〇通常通りの優先接種

となります。

 豊島区の方は、従来通り9月まで(文京区の方は同時期まで代行)一部の方を除き当院にて事務手続きが可能です。

 状況により再度の変更の可能性もあり、極力病院掲示板やHPにて告知いたしますが、念のため豊島区のHPにてご確認ください。

2020年04月01日午前03時 新型コロナウイルス(Covid-19)への当院の対応について
〇病院スタッフの手指衛生および診療台や医療器具、入院室、衛生設備などの衛生管理は、日常の診療より流水・石鹸・洗剤での洗浄と70%エタノールやオゾン水、クロルヘキシジン、複合次亜塩素酸製剤、二酸化塩素製剤、逆性せっけん(製品名マスキン、ビルコンS、バイオウィル、パコマ、ヒビテン)などによる消毒・殺菌、マイナスイオン微細ミスト発生型空気活性システム、トゥルーライトなど目的と状況によって組み合わせて使用することで徹底しております。

〇特に手指衛生は各患者さんの診療後だけではなく、診察中も医療器具の取り扱いや移動時、処置内容の変更時などにも手指の消毒を徹底しております。犬と猫の感染症について、院内感染と思われる事象は今まで起こっておりません。

〇現状のCovid-19感染の拡大に伴い、これらの衛生管理をさらに徹底しております。さらにドアノブやカウンター、ボールペン、クリップボード、待合室、トイレなど、人が触れる箇所の定期的な清拭・消毒と診療室・待合室その他の換気の徹底をしております。

〇今後、さらに感染拡大が持続する場合や外出禁止令の交付、首都圏封鎖などが起こった場合は、公衆衛生上の観点から、飼い主さん並びに動物、獣医師及び獣医療スタッフの感染を防御し、動物の福祉を守るために、以下のように対応する予定です。

 これらは、当院だけの対応方法ではなく、行政機関および東京都獣医師会の指導、米国の安全保障省ガイドラインやロックダウン施行中の米国内動物病院の対応を参考に、当院にて考案したプロトコールです。

1、外来診療は現体制を持続できるよう努めますが、診療はかかりつけの患者さんに限らせていただきます。さらに、緊急や急を要する患者さん、重篤な病状の患者さん、継続的な治療が必要な患者さんの診療が主となります。

2、予防接種や避妊手術、緊急性の低い診療や処置はご来院をお断りし、外出禁止令解除後のご来院となることもあります。

3、診療は、獣医師と患者さんが距離を隔てたところで電話やメール、インターネットなどの情報通信技術を用いて診療を行う遠隔診療(telemedicine) が基本となります。この場合、直接診療を行わない場合も多くなり、薬剤の処方や処置の指導のみとなる場合もあります。そのため、診断や治療の精度、治療内容の限定など問題もありますが、その点はご了承いただかなくてはなりません。そのため、遠隔診療の可否については動物の体調や病状、経過によりその都度ご相談させていただき、ご来院が必要と判断される場合は予約診療として対応します。

4、直接のご来院は避けていただき、必ずお電話にてお問い合わせください。まず、問診聴取や来院の必要性の判断、感染リスクの判断などを先に行います。

5、来院される飼い主さんについて、「発熱や呼吸器症状の有無、新型コロナウイルスに感染している人との接触の有無、海外渡航の有無」を必ず事前に確認させていただきますので、正しくお答えください。あてはまる飼い主さんは、他の方にご来院いただくなどこととなります。

6、診療の際には、全ての患者さんと病院スタッフの接触を減らします。お電話にて病院に到着されたらご連絡をいただき、再度問診の補足を行います。ご来院された際には、特別な場合を除きご自身の車中または病院屋外でお待ちいただくこととなります。

7、大型犬以外は特別な場合を除き、首輪やリード、服ははずしていただき、必ずキャリーケースに入れてご来院ください。キャリーケースを病院玄関前に置いていただき、飼い主さんは離れた場所で待機ください。スタッフがキャリーケースごとお預かりします。診療後は、お預かり時の逆の手順でキャリーケースをお返しいたします。

8、院内に持ち込んだキャリーケースは、ただちにアルコールまたはその他の薬品にて消毒し、スタッフもただちに手指洗浄と消毒を行います。診療は、マスクと手袋を装着して行います。

9、診療費は、クレジットカードやICカード、スマホ決済アプリなどをご利用ください。

以上を励行することで、飼い主さんと動物、病院スタッフの感染を回避し、新型コロナウイルス(Covid-19)の感染拡大を防ぐよう、何卒よろしくお願いいたします。

2020年03月31日午前02時半 Covid-19
 Covid-19の感染拡大が止まりません。中国やオリンピックに日和った政府の対応や残念ながら起きた買い占め騒動、もしかしたらという希望はあっさりと裏切られ、やっぱりかという落胆が大きいです。

 仕事が遅くまで及ぶと、どうしても外食せざるを得ない機会も多く、手指衛生の徹底やうがい、マスクなどを徹底しながら、外出する・・・。感染するより感染させる方が怖いと思いますが、なんとか迷惑をかけないようにするのは難しいのかもしれません。中国の統計では、無症状患者からの感染リスクは、発症患者と同等というものが発表されました。統計の内容は不完全ですが、また1つこのウイルスの怖さが増えた気がします。元々動物のウイルス疾患でも、不顕性感染というものがあり、症状がなくとも感染源になることは常識でしたが、当初の報道に僕も安心してしまっていました。

 ニュースは、特にネットから得る情報は、自分の欲しいものだけに集中できるという利点がありますが、それは反面、自分の欲しい情報しか目に入らなくなり、さらに信じたい情報だけを選び出すという間違いを起こしやすい。そんなこと百も承知だったのに、やってしまったなあ。

 政府の発表が信じられないという意見をよく聞きます。信じられないならなぜ、自分の目で正しい情報を見つけ出す努力をしないのか。情報を正しく判断する力を身につけないのか。専門用語が多いと嘆くならば、なぜこのような未曾有の状況になっても自分で理解できる知識を得ようとしないのか。自分の未熟や非力を他人のせいにするのは、もうやめにしたらどうだろう。

 自分の感情に任せて人を批判する、自分の不安をまぎらわすために人を傷つける、自分の思想に少しでも合わない考えは否定する、自分の正義を振りかざす、熟考できていない意見を無責任に垂れ流す、人の意見を考察もせず鵜呑みにする、親切を装いフェイクニュースをまき散らす・・・。醜い心が、こんな時に露呈します。

 こんな時だからこそ、日本人の美徳を口先だけでなく体現できないものでしょうか。偉そうなことを普段言っているなら、行動でそれを示せないものでしょうか。

 犬や猫への感染も危惧されていますが、事の真偽はまだ分かりません。香港で認められたPCR陽性犬は、症状もなくすぐに陰性となったようです。ベルギーで認められた猫の陽性例は、呼吸器症状と消化器症状を呈しているようですが、実際にこの検査が正しく行われたのか、結果の考察は正しいのか、症状と感染の関係性はどうか、など何も情報がないので、今のところ判断のしようがありません。ただし、動物への感染の可能性が強くなっても、人のように感染を媒介するのか、人のように発症するのか、それはまた解明しなければいけないことです。

 ただもし、犬や猫にも人同様に感染することが実証されたら、その他の事象が不明でも、あるいは風評や不安だけでも飼育放棄や遺棄、殺処分など心無い飼い主さんが増えることが心配されています。これに対して、同様のことが起これば自身の生命にも関わることとなる獣医師も、職場放棄を選択する者は少なからず出てくるでしょう。狂犬病定期集団予防接種でも、すでに参加を渋る獣医師が出ていると聞きます。

 今は日本から一掃された狂犬病は、数多の犠牲(この中には動物も入ります)と先人の尽力によって撲滅できた感染症ですが、その中で獣医師が命がけで“逃げず”に戦った歴史はすでに人々の記憶から風化されており、獣医師や行政の中にもその歴史を知らない者が少なくありません。しかし、その事実を我々獣医師は忘れてはいけませんし、模範としなければならず、その諸先輩方に恥ずべき姿は見せる訳にはいきません。

 生命に関わることが、生命を扱うことがどういうことか、獣医療従事者も含めて、今一度考えなければいけない時です。震災の時のボランティアでは、もちろん感謝していただくことが多かったのですが、「こんな時に動物かよ」と揶揄されたことも少なくありません。たしかに今は、人が生き残りをかけている状況で、動物の生命を考える余裕はないかもしれません。ですが、それは人の身勝手です。自分の余裕があるときは頼っておいて、その余裕を失った途端掌返し。そんな変節をする動物は、たぶん人間だけでしょう。

 人が動物を伴侶として迎え入れ、動物に癒され幸福を手にして、家族と感じている方が多い以上、あるいは小動物に限らず我々の生活のために尽くしていくれているたくさんの家畜や動物園や水族館の動物など、全ての動物の生命と福祉は、やはり人間が守らなければいけません。僕は獣医師として今まで関わった犬や猫たちの全てに、人と関わって幸福だったと感じてくれるように、生命と福祉を考える一臨床獣医師として、獣医師という仕事を全うしたいと思っています。

2020年03月10日午前02時 2020年度狂犬病予防定期集合注射
 狂犬病予防定期集合注射2020年度の実施について

 新型コロナウイルスの感染予防のため、豊島区では例年4月1日〜7日の実施されております狂犬病予防定期集合注射を、東京都獣医師会からの厚労省および自治体への申し送りにより、4月の実施を中止、6月までの法定期限内(未定)に延期と決定しました。

 本来は、厚労省および各自治体にて協議され、東京都獣医師会へ要請があるべきことですが、新型コロナウイルス感染症対策に行政が集中していることより、現在各地域の獣医師会単位で協議・対応しております。

 感染症の状況により実施期日の決定は遅れるとものと思われ、中止という事態も予測され、今後どのような形での実施となるかは現状不透明です。例年通り、定期集合注射をご利用になるために決定をお待ちいただくこともできますし、各動物病院での外来診療での狂犬病予防接種は、平常通り実施しておりますので、そちらをご利用いただくこともできます。

 迅速な対応を行っておりますが、法的な問題もあり、さらに異例の事態のため、至らない部分もあるかと存じますが、ご協力をお願い致します。

2020年02月25日午前02時半 2019-nCoV
 新型コロナウイルスが、初期の予想をに反して猛威を振るっています。ここまで感染力が強いことが予測できませんでしたが、反面、マスコミが扇動している部分もあり冷静に対処する必要があると思います。

 僕は医師ではありませんので、専門的かつ的確な情報は医療関係の情報を活用していただくとして、あくまで動物のコロナウイルスの診療を行う際に必要と思われる人のコロナウイルス感染症の勉強もしておりますので、僕の分かる範囲で書かせていただきます。元々、コロナウイルスは感染性も病原性も強くなく、消化管疾患を起こすウイルスという印象が強いのですが、このウイルスにはタイプの異なる種類がいくつか存在し、そのタイプによってはSARSやMERSそして今回の2019-nCovのように、感染力が強く、病原性も強い呼吸器疾患となることがあります。

 実際には、人の下痢の原因となるコロナウイルスは冬季下痢症や小児下痢症などの名称で語られることが多いのですが、危険な病気ではありませんし、他の動物に感染することもありません。犬の混合ワクチンに含まれるコロナウイルスも下痢を起こしますが、幼齢時あるいは他の感染症との混合感染でなければ、そこまで重症にはならず、また人にも感染しません。犬のコロナウイルスがそれほど危険な感染症ではないことは、当院でワクチン接種をされている方は必ず初回接種時にご説明しておりますので、ご存知かと思います(副反応の少ないワクチンを選ぶと、コロナウイルスが入っている製品になってしまいます)。猫でも、基本的に腸炎を起こすウイルスですが、、伝染性腹膜炎(FIP)という致死的な感染症を起こすことがあることも知られています。もちろん、これも人には感染しません。

 ウイルスには感染する種を限定する基本的な性質がありますので、感染症は他の動物には感染しないことが多いのですが、ウイルスの中には人獣共通感染症(Zoonosis)が存在します。新型コロナウイルスは、何らかの動物から人に感染したと考えられていますが、今のところ解明されていません。SARSはコウモリから、MERSはコウモリだけでなくラクダからとも考えられていますが、他の動物への感染は報告されていません。

 となると、現状では新型コロナウイルスも、犬や猫を始め、エキゾチックアニマルや家畜には感染しないと考えて間違えありません。ただし、今後どうなるかということに関しては、しっかり見ていかなければいけません。

 動物には感染しなくとも、人と同じく媒介する可能性はありますから、症状のある方が動物に触れるときはマスクやグローブをすることも必要になるかもしれませんし、万が一感染が疑われる方が触れるようなことがあれば、防護だけでなくシャンプー等も必要になります。

 症状が重篤になることは少ない疾患であること、元々肺炎が死因となることは確率が高いこと、症状が重篤になる方は高齢者や基礎疾患をお持ちの方であること、など正しい情報をしっかり理解する必要があります。若年の方の重症化も、そこに至る経過や体質、生活、基礎疾患などの情報をしっかり得る必要があります。怖がり過ぎること、デマの流布、誹謗中傷、人がパニックになることのほうが、感染症より怖いことだと思います。

 ただし、ウイルス疾患には抗体依存性感染増強やサイトカインストームという突然の変化をみせることもありますから、もちろん注意が必要です。また、うがいや手洗いの徹底によりインフルエンザ感染症が減っている事実は、このような対応だけでもウイルス感染症に効果があることの証明でもあります。

 動物に関する情報は、HPのトピックスに掲載した通り、東京都獣医師会から情報発信されておりますので、参考になさってください。

2020年02月04日午前02時半 やっと年越し
 ここまで長く更新できなかったのは初めてですね。年末からイレギュラーなことが続き、年明けから学会が続き、気が付いたらあっという間に2月になっていました。

 今年の大晦日は、午前の診療が終わったら、お願いしてあるお刺身やチャーシューを受け取りに行きつけのお店へ。その後、お届け物をしに大先輩のお宅へ。夕方からちょっと昼寝をして、例年通りたまった事務仕事を、紅白とRIZIN、そしてボクシングとテレビのはしごを繰り返しながら片付けます。ところが、昨年末はこれが全く終わりませんで、合間にいつも書くこの独り言もかけない始末で。気が付いたら年を越していて、0時と同時に部屋の角に貼る穴八幡さんの一陽来復のお守りも貼り忘れ、countdownも聞き忘れ。

 なんとか家族ととげぬき地蔵へ初詣。長年の顔見知りでいろいろなお祭りで会う、じゃがバターの屋台の親父さんに挨拶して、特製の味噌たっぷり載せてもらいいそいそと帰宅。この味噌は、他の屋台とは美味しさが段違いです。普段なら、ここからNHKの生さだをだらだら観ながら、このじゃがいもをつまみに呑むんですが、再度仕事のためにPCに向かってお仕事を。気が付いたら4時になっておりました。

 年の明けた気がしないまま元旦の朝、里帰りの長女を交えてお屠蘇やらお年玉やら恒例の行事を、これも恒例の爆笑ヒットパレードを観ながら滞りなく済まし、静岡の実家に向かう家内と娘を送り出し、急患がなければ部屋でごろごろ、さあ好きな映画を観ようと意気込むところですが、今年は何の心境の変化かPC周りの大掃除を始めてしまいました。

 さてこのはまった大掃除、夜からこれまた恒例の親友との飲み会のために一時中断、朝まで呑み歩いたために翌午後まで休戦、再度戦い始めましたが夜からの予約診療とこれまた恒例の真夜中のスターウォーズ鑑賞に出かけてしまい、再度休戦。結局3日まで続き、これでさらに火が付き、4日にかけてその後は本の整理を始めて大きな段ボール箱に3箱ほど、中古の本屋さんに売却。全部で225冊でした。

 本当は、毎日ウェートトレーニングをすること、医学雑誌を片付けることを目標にしていたお正月、トレーニングは2日だけ、雑誌の整理は皆無という全く予想外の展開でした。とまあここまで書いてみると、イレギュラーもありましたけれども恒例行事もまあまあこなしているようで、そんなにいつもと変わんないのかなあと思ってしまいました。

 5日からは、お休みをもらって親友と温泉へ。雪の中、ただ呑み続ける毎日を過ごし、次の週末は日本獣医麻酔外科学会の委員をやっているもので大阪へ。この飛行機の中で派手に咳している方がいらして・・・、今思うとあの人は大丈夫だったろうか、潜伏期間を過ぎたから自分は大丈夫、いや待てよ俺はキャリアか?などいろいろ考えてしまいます。
 
 あ、ここでちょっとした豆知識を。今、コロナウィルスの話題で報道が過熱していますが、ネットも含めガセネタがいっぱい、皆さん騙されないようにしてください。例えばマスク、本来は咳をしている方がちゃんとつけていれば周りは必要ないものなんです。ただし、顔を触れる手が病原になることが多いので、それを防ぐには効果があります。

 コロナウイルスは、元々は病原性の強いウィルスではなく、ちょっと下痢を起こすようなものなんですが、変異をするウィルスなので今回のような突然感染性の強い奴に変わったりします、いわゆるSARSやMERSのパターンですね。猫を飼っている方なら合点がいくと思いますが、猫のコロナウィルスも下痢を起こすだけのものとFIPを起こすものとありますよね。

 また、症状がないのにウィルスが感染していることがショッキングに報道されていますが、これウィルスはみんなそうです。インフルエンザだってそうですし、先に挙げた猫のコロナウィルスだって、FIVだって、FeLVだってそうです。動物を飼ってらっしゃる方は、動じていないと信じています。

 12月いっぱいで退職した看護師の田島の穴を埋めるべく、実習や面接を受け入れつつ、明石家さんまさんの舞台を皆で観に行ったり、その田島の送別会を中華料理屋さんで行い、春節の真只中で獅子舞に頭を噛まれつつ、肺炎大丈夫かなあと軽く思いつつ美味しい料理にその不安も忘れ。翌日には、これまた委員の獣医アトピー・アレルギー・免疫学会を迎え、例年通り熱い学会に精魂尽き果て、打ち上げで呑みすぎ・・・。

 とほっとしたのもつかの間、2月にある講習会の実行委員会があり、6月にある日本獣医麻酔外科学会の準備が始まり、週末には横浜で会議、という波を乗り切っての今日、そう今です。

 というところで、一気に2ヶ月を乗り越え、次はすぐに更新をするぞという意気込みの中で終わろうと思います。あ、くれぐれもマスクや消毒薬の買い占めはやめましょう。ネットで弱みに付け込んで暴利をむさぼる奴らからも決して買わないでください。一気に皆が買うから品薄になってるだけで、すぐに生産が追いつき余り始めるはずです。特に医療品は保存方法が大切なので、大量に買い込んでもだめにするだけのことも少なくありません。1人の人がマスクをしても、周りの方がしなければ効果はありません。だから、皆で仲良く分け合って、皆で元気に過ごせるように、パニックだけにはならないように。

2019年12月14日午前03時 日本人
 日本人が日本を誇ること、場合によっては他の国に対する優劣を論じること、他者を蔑むこと、特にマスコミやネットで取り上げられることが多いのですが、とても違和感を感じます。以前は、マスコミやネットの一部だけが言っていること、そう解釈され放置されてきましたが、今や自分で検証せず、考察せず、評価せず、何でも右に倣えで信じ込んでしまう日本人にその言い訳は通用しません。

 皆が言う通り日本人は礼節を尽くし、規則を遵守し、忍耐強く、慎み深いのでしょうか。そもそも慎み深ければそんな発言や情報発信はないはずです。この一事で、僕の感じる違和感は正しいんじゃないかと思ってしまいます。

 例えば、神社仏閣に参拝する方が増えていますが、そもそも敬う気持ちで参っているのでしょうか。インスタ映えばかりを考え写真を撮りまくる、入ってはいけない所に入る、触れてはいけないものに触れる、これが参拝と言えるでしょうか。写真ではなく心に刻むことがどれだけ大切か、まあこれは何でも写真を撮る今の時代にはそぐわない考えかもしれませんが。

 神道や仏教は利他を尊むものですが、自分の願いを叶えること、自分にパワーをもらうことに傾倒する参拝は、正反対のいわゆる利己だと思います。そもそも、パワースポットはただ一方的に力を頂くための場所ではありませんし、むしろ負の心が充満しており、意思が弱ければ危ない場所です。聖域である場所にズカズカ入り込む、神木に触りまくる、こんなもの参拝でも何でもないように思います。

 伊勢神社に伺った際、電車に乗車して我先に席に座る人をたくさん見ます、人を押しのけてでも良い場所でお参りをしようとする方は少なくありません、参拝の道すがら嬌声をあげたり大声を出す・・・、あれ?日本人の美徳って何でしたっけ?

 日常は全く意識せず、自分を律せず、都合の良い時だけ日本を誇り、日本人の美徳を高らかに誉めそやす。お互いに馴れ合いというリスペクト合戦を繰り返し、傷をなめ合う。インスタやブログ、ツイッターで報告と称して一方的に自慢をし、認められなければ不満を言い、見る目がないと罵りつつ、自分の意見や好みにそぐわない他者は攻撃的な言葉で批判し、貶める。偽りの友人関係を築き、気にいらなければ他愛のないことで排除する。簡単に傷つき、痛みに過剰に反応するくせに、他人の痛みには配慮をせず、平気で傷つける。

 自分の理解を超える発言や表現に対し、その事情や感情、主旨を理解しようとせず、上辺だけを読み取り過剰に反応する。自分の考えや想いのみを常識や正義ととらえ、他人のわずかな誤解や誤りも許さない。臓腑をえぐるような言葉を乱発するくせに、知識としての語彙は少ない。文意をとらえず表面でのみ理解したつもりとなり、自身の発する軽薄な文章には深く文意を読み取るよう願う。受け取る情報の精査も検討もせず、時には一部分のみ取り上げて結果的に事実をねじ曲げ、責任を取ることもしない情報を堂々と発信する。そのくせ、何の疑問も不安ももたずに、権威や人気のある人には右に倣えで同調し、流行にも簡単に乗ってしまう。

 令和への改元を人気取りに利用する政府、それを浅はかにお祭り騒ぎをする人々、そもそも改元なんて公家の考えた失敗を隠すための方便で、危機を脱するための神頼みで、いつの間にか後付けで権威の象徴に仕立て上げられたようなものだと理解しています。天皇を尊敬する気持ちはありますし、大切な存在であることは間違いありませんが、古来日本は公家が騒げば世は乱れると言われ、歴史的にも戦乱の端緒は公家の誹謗中傷や出世争いがほとんどであることも知らなければいけません。信長は自身の権威の象徴として南北朝時代から没落にあった公家を復興させました。明治維新でも、公家の活躍の陰に公家を利用した維新政府の影が見えます。太平洋戦争もしかり。

 安倍首相の放言と逆切れ、不遜な態度、説明責任を果たさないずさんさ、無責任さ、ほんとに恥ずかしい。徴用工問題も韓国の条約反故は論外ですが、沈着冷静に今までの甘やかした歴史を振り返って態度を改め、毅然とした対応をするべきです。逆切れそのものの日本の報復、大人のすることじゃない。

 複雑に思います。自分が可愛い、自分大好き、究極のマスターベション集団が今の日本人だと思います。

 と思ったら、ラグビーW杯での開催地としての日本の評価、ファンの態度、おもてなし、全てが素晴らしかった。続いて起こった台風被害での対応も、一部の自治体を除けば被災者を中心に頑張りました。そう、これが日本だと誇れることもあります。

2019年11月26日午前03時 W杯
 ラグビーW杯が盛況のうちに幕を閉じました。前回大会でラグビー人気が過熱し、定着するかと期待したけど一大ブームというよりは五郎丸フィーバーで終わってしまい、実は開幕前はそんなに盛り上がらないと思っていました。そういえば、サッカーもそうだったよなあって。

 だけど、開幕してみたらこの盛り上がり。しかも、この盛り上がりは日本代表の活躍だけではなく、各国代表のプレーや態度、いわゆるラグビースピリットによるもの、それこそ日本全体のラグビースピリット熱であると思います。そして日本での開催に尽力された関係者やボランティアの方たち、そして何より代々日本でラグビーに関わった人たち全てのおかげだということも忘れてはいけないと思います。

 でもへそ曲がりで天邪鬼の僕は、喜んでばかりではありません。まずは、なぜ全試合放送ができないのか、地上波テレビ局って、スポンサーって、そんなに尻の穴ちっちゃいの?だったら普段威張っているNHKが何とかしろよ。準々決勝がオンタイムで全試合放映されていない、この事実に驚きました。すみません、不適切な表現がありましたことをお詫び申し上げます。

 日本代表を何でも褒めるのやめません?プレーの過大評価もやめません?願望や幻想を事実と思いこむような、集団催眠のような賛美をやめませんか?スポーツは、正しく評価して、正しく批判して、正しく提言して、叱咤激励しなければ、強くはならなし、文化も成熟しませんし、何より人気も定着しません。良い試合をすれば満足するチームではもうないと思うんです、日本代表の実力は。鼓舞しなければ力を発揮できないチームでもありません。彼らの不断の努力は、精神力は、魂は、それはもう素晴らしいと思います。でも、それは多かれ少なかれ日本だけが行っていることではありません。そのうえで何をするか、何ができるか、結果を残すか、だと思います。正しく伝えること、どんなスポーツでも日本では行われていません。自チームに有利な場所でしか試合をしない、スポンサーに配慮したスケジューリングや試合相手の選択をする、こんな選手や競技を蔑ろにした強化もやめませんか。

 イングランドはなぜ、準優勝のメダルの授与を拒否したのでしょう。悔しさは分かります、負けたことではなくその試合内容を屈辱と感じたのかもしれません。でも、どんな理由があってもやるべきことではありませんでした。ラグビースピリット、勝敗よりもその態度を重視する、どこ行ったの?それも一番の伝統国が、発祥の国が。でも何より許せないのは、それまでに敗れ去った国に対して侮辱行為だと感じます。そして、尽力した全部の関係者たちとファンに。

 さて、嫌な話はこのくらいにして。今回のW杯をきっかけに、日本のラグビー史で知らなかったこと、知っていたけど詳しく知らなかったこと、いろいろなことを知ることができました。僕らの子供の時、日本でもラグビーブームがありました。野球部のシーズンオフは、ラグビーをしていました。慶応出身の父に連れられて神宮や秩父宮に通っていました。だから、ラグビーへの想い入れはちょっと強いのですが、それだけでなく、テレビではスポーツ中継が今に比べて格段に多かった、ゴールデンタイムに実業団バレーが普通に放送されていましたし、サッカーは高校の大会が中心でしたが、社会人や海外のプロサッカーも人気がない中でも放送がありました。ラウビーも実業団と大学を中心に、高校の全国大会も普通に放送がありました。自然とスポーツを観戦する習慣ができていましたね。だから、ラグビーといえば新日鉄釜石の森選手や松尾選手、洞口選手、平尾選手、大八木選手などがヒーローでしたし、早明戦や慶早戦(本城選手や堀越選手、吉田選手とか)、伏見工業(スクールウォーズ)も盛り上がっていました。今回のテレビCM、三井住友銀行が最高で。霧の中で日本のレジェンドたちがパスを繋いでいくものがあって、宿沢選手→森選手→松尾選手→平尾選手→大畑選手→福岡選手・・・、鳥肌そして涙です。

 いろいろな歴史が語られています。詳細は、ネットや雑誌で読んでみてください。「ノーサイド」という言葉はラグビーのルールの言葉で試合終了ですが、日本では試合が終わったらお互いに讃え合いリスペクトするという意味に変わりました。これは、日本代表監督の香山さんの想いです。当時から日本代表のユニフォームには桜がありますが、当時は蕾や七分咲きだったそうで、これは世界で戦えるようになったら満開にするという想いの表れのようです。そもそも、桜を選んだのは散ったときの美しさと見事さ、潔さ、これこそ敗者の理想の姿であると考えたからです。

 早稲田とオックスフォードで活躍した奥選手は、外交官として世界で活躍し、情と義、決断の人という印象です。イラクでのテロ事件で亡くなられましたが、日本でのラグビーの普及とW杯誘致に尽力されていました。

 当時、彼と仕事を共にした内閣総理大臣こそ森元首相で、早稲田大学ラグビー部の先輩にもあたります。森さんは、奥さんの遺志を継いで日本誘致に尽力されました。特にティア1の国が世界のラグビーを牛耳る状況に、啖呵を切って喧嘩をして、自らの日本ラグビー協会会長職を投げうって、決断を迫った事実があります。

 伏見工業から同志社大学、そして神戸製鋼と2代目ミスターラグビーの平尾さん(初代は松尾選手)も志半ばで亡くなっています。彼の命日が日本代表の決戦の日、運命を感じます。

 長年日本代表を支援している大正製薬。会長さんはラグビー経験者だそうですが、大正製薬の社是がまさにラグビースピリットを合うもので、20年前に日本代表の支援をお願いされたそうです。実業団ラグビーの企業がやるべきと辞退したものの、むしろ関わらない企業にお願いしたいということで二つ返事の了承。驚くべきは会社の役員会も満場一致、しかも育成には時間がかかるから長く支援するという姿勢もそこで決まったそうで。なんて格好良い話か。

 ウェールズ対南アの試合をスタジアムが観戦しました。久しぶりの生の観戦、それだけでも興奮なのに場内はいい意味での緊張感と盛り上がり。否が応でも期待が膨らみます。真横から観ることの多いテレビ観戦は、細かい表情や動きを観られますし、上手な解説も楽しいです。が、斜め上から俯瞰して観られるスタジアムでの観戦は、選手の動きが全て観ることができ、作戦や戦術が理解しやすい、そしてその動きからより迫力が。元々ラグビーは、自軍を応援するだけでなく相手チームのプレイも讃えながら観戦するのが当たり前と言いつつ、昔はやっぱり自軍を応援してしまうものでした。

 が、今回は皆さんしっかりそれを実践されていて。僕は、元々欧州のラグビーが好きで、特にフランスのシャンパンラグビーが大好き。となれば、応援はウェールズになるはずですが、日本を破った南アも応援したという気持ちも生まれ。試合会場でも迷っていたのですが、小憎らしいデクラーク選手を観て、彼を応援することに決めました。日本が負けた時は、「こいつぶん殴りてえ」あの不敵な笑みとクレバーで攻撃的なプレイ、すごく気に入りませんでした。他の観戦している日本人もそうなのかと思ったら、場内で一番の声援は彼!ああ、俺も応援しちゃお、簡単に決まりましたね。

 最後に一つ。ラグビーW杯の陰で、バーレーボール日本代表は大健闘していました。ソフトバンクもCSから日本シリーズと、驚異的なスイープで勝ち続けていました。サッカー日本代表もW杯予選を勝ち抜いていました。想いも努力の同じです。

 これ、止まりませんね、書き出すと。こういうのは、塩梅が大事、ここでノーサイド。

2019年11月14日午前03時 水戸
 日本史、特に幕末史が好きなんですが、歴史を知るにはやはり現地に行くことで分かることが多々あります。土地を歩いて、人の息吹を感じて、地政を学んで、見えてくることがたくさんあります。そして、彼らも見ていたであろう風景や空を観ながら酒を呑む楽しさは格別です。

 今まで、西から鹿児島、熊本、福岡、愛媛、高知、山口、京都、奈良、福島、宮城、北海道・・・、幕末史に関わる土地をたくさん訪れてきましたが、今年始めた訪れた水戸でも初めて理解できたことがありました。

 それは、「あれだけ優秀で気骨のある徳川慶喜がなぜ戊辰戦争であのような態度を貫いたのか」です。あまりにも弱腰で敗走と裏切りを重ねた理由が理解できずにいました。彼の癇癪持ちが災いしたのかとも思っていました。大河ドラマの「西郷どん」での解釈は、創作とはいえ慶喜さんの英邁さが見られる演出で、もしかしたらそういうこともあったんじゃ?そう思ってしまうものでした。でも、やっぱり腑に落ちない。

 水戸黄門での名セリフ、「控えおろう、この方を誰と心得る。天下の副将軍水戸光圀侯であらされるぞー、頭が高い」の副将軍という表現、実際には幕府にはない役職です。じゃあ嘘なの?ということではありません。徳川御三家、尾張、紀伊、水戸藩は天下の親藩、そして将軍を生み出すお家柄です。ところが、実は水戸藩、将軍を出せない家柄なんです。なぜなら、水戸家の役目は徳川幕府を律すること、だから将軍争いには関わらない家柄となりました。

 その原則は、幕府はあくまで行政機関、征夷大将軍は天皇から国を司ることを任せていただいているだけ、仕えるのは幕府ではなく天皇家、という考え方です。いわゆる尊王です。また、あくまで侍は年貢から頂く禄によって生きていること、それを支える農民や国の人たちを大切にすることも国の是としています。藩主ですら、食事の前には必ず感謝の言葉を述べ、農人形を抱き手を合わせていたといいます。

 これら思想がしっかりと教育され、脈々と受け継がれ、徹底されているからこそ、幕末に幕府の政情を憂い、腐敗を糾弾し、民の苦労を取り上げ、尊王攘夷の思想を生み出しました。

 余談ですが水戸黄門、実は日本を漫遊していません。ほとんど、江戸と水戸しか知りません。神奈川か静岡辺りに行ったことがある程度で。じゃあなぜ勧善懲悪で全国を旅したことになっているかと言うと、これは江戸時代の娯楽から生まれたようです。フィクションの痛快な物語として人気があったとか。

 でも、火のないところに煙は立たず、その根幹になる部分はノンフィクションとしてまるっきり嘘ではないようです。将軍綱吉時代の悪政を戒めたり、その他にも幕閣に意見をしていたり、権力や保身など眼中になく厳しく律していたそうです。隠居後は、水戸藩内を視察して回り、農業を奨励し、農家を表彰したり、悪行を暴いて罰したり。また、大日本史を編纂したことが有名ですが、その取材のために助さんたちを全国に派遣していたようです(格さんは、旅には出ていないみたいです)。

 話がそれました、いやそれてはいないかな。そこで慶喜さん、まずは将軍継承問題で負けて一度失脚しています。ただこれは不毛な権力争いではなく、利権のために無能な将軍を擁しようとする派閥との対決で敗れました。そう、安政の大獄です。彼は有能であるがために、人気がなかったようですね、うるさくて面倒だから。

 彼が戊辰戦争を嫌った理由、水戸藩のこの歴史からいろいろと考えられるようになりました。まずは、大政奉還をしたにもかかわらず、幕府=徳川家に積年の私怨を晴らしたい、意趣返しをしたい薩長の思惑のまま幕府側を朝敵にしてしまったことです。彼は尊王の士ですから、どんな理由があるにせよ朝廷に弓引くことはできません。

 もちろん、幕府の腐敗や頭の固い政策、門閥主義、外交による利益の独占、それによる経済の圧迫など倒幕に値することがたくさんあったのは事実です。薩長側が、それを憂いて立ち上がったのも事実です。公武合体を失敗させたのも幕府です。ただ、あの時代の外交は致し方なかったし、むしろあの程度で済ませた幕府は有能であったとも言えますし、何より志士たちの暗躍により治安の悪化や便乗の殺戮や押し込みなど許されない部分もありました。

 次に、戊辰戦争が国や民のための戦争ではなく、徳川家と薩長土との私怨の戦争であり、だれが利権を握るかという権力闘争だったことも理由となります。国や民を苦しめる戦争を避けたいと思ったのではないでしょうか。また、内乱は国力を低下させ、海外からの侵略を許すことになり、これも避けたかったのだと思います。

 さらに、幕府や徳川を無理やり存続させようとそもそも思っていなかったのではないでしょうか。だから、戦争を無意味と感じたのでは?

 こう考えると、慶喜さんの行動が理解できるのです。例え維新側が志にあふれ、軍制改革をし、有能な指揮官を多数輩出し、最新鋭の武器を揃えていたとはいえ、経済的にも兵力でも装備でも幕府は勝っています。精神的な優位だけで、朝廷側であるという大義名分だけで勝てるとは思えません。勝つ気がなかったということではないでしょうか。

 慶喜さんに関わる資料を調べれば分かることだと思いますが、僕は歴史学者じゃありません。想像するのが楽しいんですけど、間違ってますかねえ。そういえば、茨城で開業した寿司職人の方がおっしゃっていました。茨城は、特別なときしか外食しないから、と。美味しいものに興味がないのか、味に疎いのかなと。で思いついたのは、水戸藩の思想。質素倹約を通すこと、これも根付いているのでしょうかね。

2019年11月03日午前03時 8月つづき
8月は、委員を務める獣医アトピー・アレルギー・免疫学会の年次大会がありました。企画や準備から当日の運営まで、すでに慣れてきた感はありますが、毎度のごとく終わった後の充実感や脱力感は大きくて。そのあと体調を崩すことも少なくありませんが今回は元気なまま夏を乗り越えました。

最近の学会では、つまらない忖度や実の伴わないリスペクト、箔をつけるための価値のない発表などが目立ち、本来のあるべき学会の姿〜学問を追及するため、切磋琢磨する〜がみられないものも少なくありません。立場や経歴、経験などは関係なく、積極的な質疑応答や議論、討論、時には激論が交わされるべきが学会です。昔は新しい知見や試み、情報、それらの是正などを得るには学会や研究会、論文が必須でしたが、今はネットの普及によりそれぞれ手に入りやすい状況となり、より学会のあるべき姿を考えなければいけません。

ただし、これらを全うしようとすると学会参加者だけでなく、運営側にも多大な努力と負担が増えまして・・・。それが毎回の疲弊となるわけですが(笑)、それ以上に得られる価値は計り知れないもので、労苦を越えた成果が達成感やカタルシスになる訳で。あれ、それが楽しくて実は勝手にやってしまってるんでしょうかね。

ただそんな難しい話ではなく、科学者として、獣医師として、生命にかかわる者として、これらはやるべきこと、やらなければいけないこと、そしてやってはいけないことはやらない、これを行っているだけなんです。

8月13日、レタスが亡くなりました。不在であった僕に代わり、原さんが看取ってくれました。北海道にいる長男の帰京は間に合いませんでした。病院の前に捨てられていた子猫を長男が見つけて始まったレタスの病院での生活。最近は、余生を悠々自適に過ごしていましたが、今までたくさんの猫さんたちを輸血酔いう形で救ってくれました。最期は残念ながら下顎に発症した癌により生命を落とすこととなりましたが、天寿を全うしてくれたと思っています。外科手術も化学療法も放射線療法も選択しなかったことについては、後悔はありません。

キャンプに出かける前に死を予感していた僕は、しっかり別れの言葉を交わしたつもりでいましたが、急きょキャンプ場から新幹線で帰京、一晩一緒に過ごしました。朝までお酒を呑んで、二日酔いでキャンプ場に戻りました。18年間、今までありがとう。

2019年10月10日午前03時 8月
 8月は、恒例の神宮球場での野球観戦。例年スタッフと僕の家族、その友人がメインで、OB、先輩、後輩、その家族や友人、恩師、行きつけのお店の方など大人数で楽しみますが、なんと今年は総勢25名、史上最高の人数でした。僕だけが全員を知っていて、参加者は見ず知らずの人が多かったりでもみんな和気藹々、楽しく過ごしました。

 今年からできた神宮球場のパーティデッキ、ここが最高なんです。今までは、1塁側の内野席が定番でしたが、今年はここにはまっています。場所はバックスクリーン横、外野は外野で俯瞰して試合が観られるので、それも楽しい。センターの一部とレフトが見切れてしまうのは御愛嬌。席は広々、景色は抜群、恒例の花火の打ち上げの真下の席。ビールやお酒の販売の女の子の入り口でもあり、便利だし、トイレは近いし、言うことなし。

 ウッドデッキの中央を分けるようにテーブルがあって、後席の後ろにはヒップバー、前席の前にはカウンター、みんなでテーブルを囲んでワイワイできるし、前を向いて野球観戦に集中することもできます。10名用の席は14名くらい十分収容できますから、並びの2か所と近くの席を確保、全員集まって楽しい時間でした。

 特にその日は真夏日で、朝から病院廻りの清掃を日に焼けながら行い、のどはカラカラ。少し早く出て球場近くの森のビアガーデンへ。レモンサワーの進むこと進むこと、球場に入った時にはすでにほろ酔い。ケータリング手配をした料理やお酒も届き、参加者も三々五々料理やお酒を持参して野球観戦がスタート。応援で騒ぎ、時に楽しく時に真面目に語らい、本末転倒ですが野球観戦どころじゃなく、正直ヤクルトの村上選手のHRとヤクルトが勝ったことしか記憶がなく・・・、こんなに野球を観なかった野球観戦はありません。全く会話もできずに挨拶だけだった参加者もありますが、言葉を交わさずともよい仲間であり、大げさかもしれませんがこれだけの愛すべき人に囲まれて過ごすこの時間は、人生最良の日と言っても過言ではないと思います。人との縁が僕にとっては一番大切なものであり、そして人に誇れる唯一のものでもあります。

 遊びすぎだと叱られるかもしれませんが、その数日後にスタッフとOB、家族との恒例のBBQを開催しました。いつも通り、神戸牛と上野の焼肉屋さんからお肉や刺身、チャンジャやキムチ、冷麺を取り寄せ、富士宮焼きそば(絶対マルモです!)を配達してもらい、行きつけのキャンプ場で早朝から楽しみました。今年のお盆は炎天下、汗を拭きだしながらテントを立て、タープを立て、火を起こし、皆暗黙の了解で分担しながらてきぱきと動きます。

 いつも通り前日は仕事が終わらず完徹で参加、そのままレンタカーの運転で昼には僕はガソリン切れ、テントで昼寝でした。若い皆は自転車で田貫湖まで、数年前は一緒に動いていたのになあと自分の年を感じました。例年は夕立がふり、テントでゲームなんて日も少なくありませんが、今年はゆっくり焚火を楽しみました。夜は一路帰京、皆で一仕事して解散、僕はレンタカーを返却して自分の車で再度キャンプ場へ。深夜に到着して、月明かりで独り酒を呑みました。

 今年のお盆のキャンプは、猛暑の中での熱々キャンプ。晴天の時は青空と強い日差しの元、たまに上空を通過する旅客機を見上げつつ、いつも通り炎天下のPC作業で健康的に日焼け、講演の準備がはかどりました。管理人さん自作の屋外ジム施設で汗を流し、午前中から景色の良い風呂に入り、昼寝をして、夜は管理人さんたちと酒を呑む。至極至高のお盆でした。

 そうそう、昨年以前から一度立ち寄ってみたいと思っていた富士宮のお鮨屋さん、今では仲良しの常連さんになりました(笑)。職人気質の大将と気風の良い奥様のお人柄が抜群で。しかも、猫が大好きとのこと。意気投合するに決まっていますね。7月に腎不全で長老猫さんが入院されたとのこと、いろいろご相談に乗ることができました。さらに、僕が好きな五石橋という焼酎が常備されている稀有な名店。近所だったらなあ、心底思います。

 最後の2日は、台風直撃の不穏な空気。キャンセルが相次ぐ中、管理人さんの判断の元、危険はないと考えそのまま逗留。危険があればキャンプ場は即閉鎖、そうならないのであれば自分で自分の安全確保は怠らないうえで、楽しみます。不謹慎ですが、台風が来る前ってワクワクしちゃうんですよね。

 台風中にチェックインする強者もおり、台風前の風の強い日差しの中で子供たちが走り回り、僕は同志を得た気分で見守りました。うちのテントは小川というメーカーの頑丈なもの。雨にも風にもびくともしませんでしたが、音にはまいりました。雨や風の音には風情がある、いつもそう話していますが限度がありますねえ(笑)。

 帰路はお盆とは思えないくらいの混雑のない高速道路でしたが、道路が川のように雨水が溜まっている所もあり、慎重かつ楽しみながら嵐の中を帰京しました。東京は、打って変わって熱風の吹く台風一過の街でした。嵐で洗い損ねたビニールシートやグランドシートを洗浄し、干している間にご飯を食べに。

 楽しいことが終わってしまうと、ポッカリ心に穴が開くというか寂しさが強くなって。そんなときは、帰宅後にクアハウスに行ったり行きつけのお店に行ったりして、もうちょっと楽しいよ、という時間を作ると翌日からまた頑張れるんですよね。わざわざ疲れに行ってるのかもしれないけど、ギリギリまでトコトン遊ぶのが僕の基本です(笑)。

2019年10月01日午前05時 7月
 更新が途絶えてしまいました。この連休を利用して(9月15日に書いてます)、書きためてみようと思います。7月は、海の日の連休を利用して久々のキャンプでした。いつも行くキャンプ場は朝霧高原、雨が比較的多い山の中ですが、毎年海の日は夏を感じる暑すぎるくらい暑い日が続きます。

 昨年は、キャンピングカーをレンタルして(部屋にもエアコンが付いているタイプ)快適なキャンプを目指しましたが、これが失敗で。発電機をつけて騒音で周りにご迷惑をお掛けするようなマナー違反は御法度、レンタルしたキャンピングカーは外部電源が利用できるので、これで良しと思っていましたが考え足らずで。あ、もちろん電源は正規の利用です。話がそれますが、ドライブインやサービスエリア、道の駅、Pキャンで自販機のコンセントを勝手にはずしたり、キャンプ場内の電源から許可なく盗電する人が多いそうです。そういうの見つけると僕は抜いちゃいますけどねえ。

 ついでに言うと、キャンプ場以外の上記のような駐車場などに車中泊するときは、必ず休む時間に限って利用することが大前提、他のご利用される方やそこのお店に迷惑をお掛けしてはいけません。テーブルやイス、オーニングやタープを使うなんてもちろん論外ですが、それを越えてBBQしちゃう馬鹿までいるみたい。上記の盗電に限らず、洗面所やトイレの蛇口にホースをつなぐとか、夜間に発電機を動かすとか、非常識な奴が多すぎます。

 20年位前、学生時代から車中泊をしていたのですが、偶然にもPキャンという言葉を作った方とお話しする機会がありましたが、実はその頃から今のような事態を危惧されており、         Pキャンは次期にできなくなるだろうなあと嘆いていましたが、案の定今はかなり規制をされるようになってしまいました。まさに自分で自分の首を絞める行為ですが、本当に好きな人はマナーやルールを守ってきたのに楽しくPキャンができなくなり、ブームに乗って悪さをしていた輩は、問題を大きくして他のブームに乗り換えるから後悔もしなければ、反省もしない。周りに迷惑をかける撮り銕や鉄オタしかり、いろいろなキャンプ場を閉鎖に追い込むキャンプブームしかり、インスタ映えしかり・・・、ほんとやめてほしい。
 
 悪貨は良貨を駆逐すると言いますが、まさにそれ。幕末に多発した京都での暗殺事件は、その評価は分かれますが、日本のためあるいは藩のため、天皇のためと信じたものの好意から始まりました。そこに付け込んだ私利私欲のために打ち込みや暗殺をする武士がさらに多く群がり、結果的には京都所司代では対処しきれなくなり、新撰組や見廻り組という武力行使を前提とする警察組織が誕生しました。結果、私利私欲の者は京都に寄り付かなくなり、政治的に京都に潜入する必要のある有志の武士はかなりな死者を出すこととなりました。

 閑話休題、エアコンを動かすと室外機が動くんですよね、車内にあるとはいえその音は外部に漏れます。そこまで大きな音ではありませんので、大丈夫ですという管理人さんのお言葉でしたが、やはり皆さん夜は静かに過ごしたいですよねということで、夜間はエアコンを遠慮して。となると、窓を開けても風がなければ室内であるキャンカーは蒸し風呂に。ちょうど原稿の締め切りを控えていたため、深夜に原稿を書く僕は団扇を片手に昔の作家さんみたいな、汗をかきかき水分補給と室外にたまに涼みに出て。2日目には卓上のちっちゃく安い扇風機を購入しました(笑)。

 夏のキャンプは、エアコンのなかった幼少期の夏の暑さを思い出させてくれる機会で、暑いときに暑いと感じながら過ごすことは実は正しいんだろうなあなんて夢想しつつ、とても楽しいです。空を見上げれば青い空と白い雲、通過する飛行機、まぶしい太陽。ひとっ風呂浴びて暑くなりつつ風呂場から出た瞬間の涼しさ、そのあとの冷たいアイスや麦酒、お茶。忘れていた感謝を思い出します。

 明け方や夕方には鳥や蜩が、昼間は油蝉やツクツクホーシが、夜には虫の声が、そこに風の音や揺れる木々や葉の音、影ができるくらい明るい月の光、川のせせらぎ、雨がテントに当たる音、何だかわからない動物の遠吠え、満天の星。ランタンさえ明るく感じるこんな夜に、発電機や室外機は無粋です。

 GWやお盆などの長期の休みは、キャンプ中でも帰京して診療をする日がありますが、そんな日は5時にキャンプ場を出発、新富士駅から新幹線の始発に乗り帰京。1日不在となるのでキャンカーだと家族のいるところがなくなっちゃう。海の日はお休みを頂いて長逗留できるとき、だからキャンピングカーを借りる唯一のチャンス!ということで、懲りずに今年もレンタルしました。昨年の夏に書いた本の発売が遅れに遅れてその原稿の直しがあり(無事9月に発売予定!「感染症科エキスパートマニュアル」学惣社)、11月の講演のスライド作りがあり(11月10日、17日「動物の飼い方と健康」財団公益法人としま未来文化財団文化カレッジ(区民教室)南大塚地域文化創造館、https://www.toshima-mirai.or.jp/tabid216.html?pdid1=2012)、あっこれ宣伝です。

 ところが、期待していた暑さどころか太陽も出ない雨が続く自分史上初のずっと寒い海の日キャンプ。だから、キャンカー大活躍、嬉しいやら悲しいやらの7月キャンプでした。暗い車内で欝々とキーボードを叩き、仕事はかなりのはかどりでした(笑)。

2019年07月20日午前04時 しつけやトレーニングについて 改訂版2
〇散歩
・散歩は、動物の運動や排泄のためだけでなく、人とのスキンシップをとること、楽しく過ごすこと、動物の見回りをしたい本能を満たすことなどが大きな目的です。さらに、物の動きや光、音、風、匂い、いつもと異なる地面を感じることは、身体にとても良いことです。

・動物と一緒に外出するときは、出口でスワレやマテをさせて、人が先に外に出て、褒めて外に出してあげます。家から先に出ることは、強い者が行うことです。

〇出迎えや見送り
・動物に見送りや出迎えをさせてはいけません。それは、優位の動物が行うべき行為だからです。

・お出かけのときは、特に動物には声をかけずに外出してください。「出かけることは自然である」こと、「留守番は普通」のこと、「独りでも怖いことはない」ことを理解してもらうことが大切です。声をかけることは、「留守番は特別」なことや「これから独りになる」こと、「独りになることは恐怖」であることを脅迫することとなり、むしろ動物はストレスになります。

・本来の動物の出迎えは、自分の場所でじっと待ち、褒められたら喜ぶという形です。出迎えに対しては、無視をしてください。足でいなしたり、声をかけてもだめです。そのうえで、着替えや片付け、手洗いなど外出後に済ますべきことを終えたのち、改めて一度得意なことをした後、褒めてあげて、遊んであげてください。

〇その他の動物の原則例
・動物の食事は、人の食事の後に。食事の順番が上下の順番となる動物には、人が食事をするのを見せること、その間は我慢して待つことから、リーダーが誰かを理解します。

・動物が寝ている場合、よけて通ることなく起こして通ります。よけて通る者が弱者になるからです。

〇シニアの行動の変化
・シニアになると、今までなかったトイレの失敗やいたずら、無駄吠え、出来ていたことができなくなるなどの行動の変化が認められます。老化や認識不全症候群(認知症)を疑うことが多いのですが、その前に実は考えなければいけないことがあります。それは「わがまま」あるいは「手抜き」です。人も動物も年をとると多かれ少なかれ頑固になり、わがままになり、少しずるくなります。

・と同時に、以前行なっていたようなトレーニングをしていないことが多く、また人もシニアということで甘やかしていることも多くなります。いわゆる「たがが外れた」状態でもあります。

・このようなときにわがままなのか認知症なのかを鑑別するのは医学的には難しく、神経症状が同時に認められるときは神経学的検査やMRI検査などで診断が可能なこともありますが、基本的には難しいと言わざるを得ません。

・実は簡単な鑑別法があります。それは、動物病院で行う診療中の身体検査や治療、処置、臨床検査などの態度を診ることです。大半の子は、自宅ではわがままを言っても、動物病院では良い子で我慢できます。認知症である場合は院内で今までできていたこと、我慢できていたことができなくなる傾向にあります。病院でわがままを言わないということは、行動をしっかり使い分けているということ、環境や相手を見て理解して判断できているということになり、認知症ではありません。

・自宅での鑑別法も簡単です。それは昔からの通りしっかりと叱ることです。叱られてその行動の変化が消えるなら、叱られたことを理解してのことですので、認知症とは言えません。叱っても変化の表れない場合は、認知症の症状を叱ることは無意味ですので中止しましょう。

・わがままが見つかった場合の対処としては、以前と同じ生活にすることや甘やかしをやめることですが、特に10分間トレーニングが効果的です。

・もちろん認知症が軽度にあって、そのうえでわがままになっている場合もあります。この場合は、認知症であることを考えなければいけませんが、ほとんどの場合は前記の対応で間違えありません。

〇10分間トレーニング
・動物が得意としていることを朝晩2回、10分間ずつ徹底して行うトレーニングです。動物と人がしっかりと向き合い10分間続けなければいけませんが、どうしても動物が集中できない時や時間が取れない場合は、短い時間で終わってしまうこともあります。このようなときもトレーニングの終了時は、必ず人が主導権を持って、最後にもう一度行ってから褒めて終わりを告げましょう。

・この際、褒めるときは簡潔に、褒める声符や頭を撫でる程度にします。どうしても難しい場合は、慣れるまでご褒美を与えても良いです。

・具体的な方法ですが、例えば「スワレ」「ヨシ」を声符にしているなら、「スワレ」→お座りをする→「ヨシ」→立ち上がる→「スワレ」→お座りをする→「ヨシ」→立ち上がる、これを10分間続けるだけです。

〇人は動物を選べますが、動物は人を選べません。

〇動物に人は癒されますが、人は動物を癒していますか?

〇頭の悪い動物はいません、教え方を考えてみましょう。

〇性格の悪い動物はいません、接し方を考えてみましょう。

〇可愛くない動物はいません、可愛さを見つけてあげましょう。

2019年07月03日午前02時 しつけやトレーニングについて 改訂版1
〇基本
・トレーニングは動物との共生に必要なことであり、動物に社会性を教え、人が学ぶ機会でもあります。人の都合の良いように動物を操ることではありません。お互いを理解することができ、動物が人と楽しく息苦しくなく暮らすために、たくさんの人たちから愛されるようになるために必要なことです。

・動物に信頼されるリーダーになること。負けないように、でも威張らないように。リーダーがいなければ、動物は頼る相手がいなくなり、自分で家や縄張りを守らなければいけなくなり、それは大きなストレスになります。リーダーがいれば、守ってもらえるという安心感から頑張る必要がなくなり、ストレスから解放されます。

・まずは、トレーニングの方法を人が学びましょう。そして初めに得意なことを作ること。スワレ、フセ、マテ、オテなどをしっかりと覚えること。

・動物は自分でできることが少なく、野生動物の強さは本能を持ち合わせていません。そのため過保護は必要ですし、大切です。反面、動物にとって辛いことは人の過干渉と過度の依存です。動物の一番のストレスは、「人」が作っているのです。

・愛情はたくさん必要ですが、態度と時間にメリハリをつけること。人から動物への依存は動物を苦しめ負担になります。動物の人への依存は、動物を弱く、不自由にします。

・動物は「サプライズ」や「スペシャル」が苦手、「平穏無事」が大好き。変化に弱い子たちですから、生活や食事の変化は負担になることが多いです。急なプレゼントや豪華な食事などの人が喜ぶような「サプライズ」は、動物も人の愛情を感じて外面上は喜びますが、それ以上に身体には大きな「ストレス」になり、体調不良や病気の原因になっています。

・何か我慢をさせた後で、たくさん褒めても、プレゼントを与えても、動物はその時嬉しいだけで、前の苦労を忘れるわけではありませんし、フォローにはなりません。

・いろいろな姿勢で遊べるように、身体の至るところに触れて寛げるように、そうなると動物は怖いことが減ります。

〇クレートトレーニング
・クレートやケージは、決して「檻」などではなく動物にとっては安心できる「巣」となります。ケージがないと、家全体が「巣」となってしまい、それは広すぎて大きすぎますから、動物は落ち着くことができなくなります。そのため、気に入った場所を必ず作るようになりますが、しっかり囲まれたケージは、野生動物の樹洞(じゅどう)や空(うろ)、洞穴などと同じ感覚になります。

・必ず楽しい所として覚えてもらいましょう。慣れない子は、ケージ内で食事を与えたり、遊んであげることで、寛げるようになります。ケージ=楽しい・寛ぎとなるように。

・留守中や夜は、できるだけケージで過ごすようにしましょう。ゆっくり休み、眠ることができますし、誤食や外傷、災害から守ることができます。

・動物が人と寝ることは、人の寝返りや体動で動物の眠りが浅くなり、人の体温にも影響を受けてしまいますので、良いことではありません。また、環境衛生やしつけの面でも人にとっても良いこととは言えません。たまに、のお楽しみにしましょう。

〇叱るとき褒めるとき
・ルールを破ったら、毅然とした態度で叱ること。時と場所、状況、人などは選ばず、どんな時でもルールを守ることを徹底すること。

・叱るときは、言葉(声符)や動作(指符)を決めること。名前で叱ってはいけません。・体罰は絶対にいけません。ただし、反抗的な態度や行動をとった場合やαシンドロームには、体罰ではなく、人の力を見せないといけない場合はあります。

・反抗的な態度を取ってしまう場合は、原因は「人」にあります。動物のルールや考え方を人が誤って理解した結果、それを動物が感じとって誤解したり、「人」を甘く見てしまっていることが多くあります。

・吠えて呼んだり、攻撃的になったり、興奮が治まらないような時は、無視をしてください。この無視は、目も合わさなければ声をかけるようなこともしてはいけません。あまりにひどい時は、叱るときの声符や指符をしたあと、ケージに入れましょう。この時の罰は、ケージに閉じ込めることではなく、人が無視をすることです。ケージ内で落ち着いたら、褒めてあげてから外に出してあげましょう。

・5つ教えて3つ褒め、2つ叱って良き犬とせよ。褒めることは、叱ることよりも大切です。褒める声符や指符も決めておくと良いですが、褒めるときは目いっぱい、手放しに褒めてあげましょう。例えそれができて当たり前のことでも。

・褒め過ぎは「特別」なことになり、結果的に過度のプレッシャーやストレスになります。ご褒美は、10回に3回くらいで十分、褒め方も飼い主さんがたくさん褒めてあげればそれで十分、プレゼントやおやつは必要ありません。

・何かができたときに毎回褒めていると、その行動が正しいと理解せずに、褒めてほしいからその行動をとるようになってしまいます。さらに、関心を惹くためにもっと褒めてもらうために、ずっとし続けてしまうこともあります。例えば、トイレを褒め過ぎると1日50回も100回もトイレに行く子がいます。

〇遊びについて
・遊びの主導権:遊びの催促には無視をすること。諦めたら、その後に飼い主さんから得意なことをする機会を与え、出来たらそれを褒めてから遊びを始める。どうしても催促がやまない場合は、得意なことをさせて一度止めてから遊ぶこと。

・ひもやおもちゃで引っ張り合いの遊びはしない、やむを得ずする場合は必ず負けないようにして、勝って終わること。

〇おもちゃについて
・動物に常時与えているおもちゃは、人は一緒に遊んではいけません。動物に人が借りて遊んでもらったことになります。

・遊びの催促を止めた後、一緒に遊ぶおもちゃを人が保管場所から出して、遊ぶこと。遊び終わるときも、おもちゃを人に返すことを教えること。返せない場合は、諦めずに取り上げること。そして目の前で、また保管場所にしまうこと。

・遊び始めるタイミングをコントロールされる相手は、動物はリーダーとして感じます。そして大好きなおもちゃを管理する人もリーダーとして感じるとともに、自分が及ばないことができる相手を強いと感じます。

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Catch: Tue Dec 3 15:17:30 2024
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